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#00473 2017.5.7
扶桑皇典(3) -天地開闢・上-
 
 
 天地の開闢を説かんとするに、世の学者は理論を以て推定せんとして、「太陽は一大火集なり、火雲の凝集せるなり。大地は岩球、岩層の二大部分を以て説くべし。月と星とは、その質、地球と同じくして、共に太陽の光輝を受けて耀くなり」と論ずれども、これは物ありて後の論にして、一物無き代の論にはあらず。

 然れば、開闢の時の如き、未だ一物も無き時の事は、その開闢に預かりし神にあらざれば知る事能(あた)はざるを、この神国には幸にして、その開闢に預かり給ひし神の神語を以て伝へ給ひし開闢当時の事、国土発生の事など、総て古伝ありて遺りたれど、外国には古伝の存する物、稀にして、僅かに遺れるは支離滅裂して首尾連続せず。

 外国とても、同じ地球の事なれば、上代には必ず神国と一様なる古伝説も存せしならめど、漢土の如きは、大洪水の外(ほか)にも、古伝は人為を以て滅したるにはあらぬか。かの秦の始皇帝は、李斯(りし)の議を容れて古書を焚きたりといふに、それ以前の孝公の時にも商鞅(しょうおう)の議を用ひて燔(や)きし事あり。また印度にも、洪水の為か、仏経以外の書とては、四種の韋陀(いだ、ヴェーダ)の外には、多くは伝はらぬが如し。

 また、西洋の大洪水は、人種も滅し、国土も沈めたりといへば、古伝の存せぬは固(もと)よりにて、その人、人智のみに偏住せるも、古伝を知らざる故なるべし。然るは、泰西(たいせい、西洋諸国)の語にては、神には神の主宰あり、人には人の主宰ある事を言はずして、神を直(じか)に人の主宰の如く説きなして、君無く親無き個人の説に執着せり。 #0097【世界太古伝実話(6) -先入観による弊害-】>> #0176【「天孫降臨」についての考え方】>> #0189【『古事記序文』解説(1) 】>> #0221【神道宇宙観略説(12) -日本の神典は世界無二の実典-】>>
 今、以下に僅かに遺れる外国の開闢説を略載して、神国の古伝を説く前提とせり。

 漢土の伝説にては、天地開闢の時、虚空中に一物ありて、その形、鶏子(とりのこ)の如くなりしに、盤古氏といふ神、その中に生まれたり。鶏子の如き物は、清くして軽き方は天と為り、濁りて重き方は地と為れり。
 盤古氏は、一日九変して、天にては神と為り、地にては聖と為れり。盤古氏は、陶溶造化の主にして、天地万物の祖なり(『三五暦記』)。盤古王は、死後に頭は四岳と為り、目は日月と為り、脂膏(しこう)は江海と為り、毛髪は草木と為れりといへり(『述異記』)。

 印度の伝説にては、開闢の初め、大虚空中に一物を生じたり。形、鶏子の如くにて、周匣(しゅうこう)金色なりしに、漸く熟破して二段と為り、一段は上に在りて天と為り、二段は下に在りて地と為りたるに、中間に梵天王といふ神を生じて、一切衆生の祖と為れりといふ(『堤婆(だいば)論』、『印度蔵志』)。
 また、一説には、開闢の時、大水ありて瀰漫(びまん)したるを、大風起こりて、その水を凝結せしめたれば、その水に無数の人物、一時に発生したり。その人には、身に光明ありて飛行自在なりき。人を衆生といふも、その一時に化生せしが為なりといへり(『長阿含経(じょうあごんきょう)』)。

 西洋の伝説にては、阨日多国(エジプト)の神話にては、元始の時、神ありて、その名を却尼布(ケニフ)といふ。この神、口より一大卵を吐き出したるが、今の全世界と為りて、大地及び日月星辰も、皆その卵中より出でしなりといへり(『鎔造化育論』)。
 また、宗教家の説には、元始の時、耶華和(エホバ)といふ造物の神ありて、天地を作りて後、人の先祖二人を造れり。男を亜富(アダム)といひ、女を夏娃(イブ)といへり。造物者は、その人を造りしには、塊土(かいど)を搏(う)ちて造りたりなどもいへり(『旧約全書』)。

 神国に神語を以て伝へたる天地開闢の時を語れば、太古、大虚空中に大神坐せり、御名を天之御中主神と申せり。また二柱の大神坐せり、御名を高皇産霊神、神皇産霊神と申せり。 #0029【造化大元霊】>> #0030【天地万物造化のはじまり】>> #0210【神道宇宙観略説(1) -宇宙の大精神-】>> #0211【神道宇宙観略説(2) -天体の成立-】>>
 この二柱の神、霊妙不測の御徳を以て、大虚空中に、その形、言語を以て形容し難き一物を結び出で給ひしに、その一物は浮雲の根とする所無きが如く、水上に浮かべる膏(あぶら)の如くにて、泛(うか)び漂ひてのみ在りし間(ほど)、葦の芽の萌え出ずるが如くにして立ち騰(あ)がる物出来て、その立ち騰がる間に神生(あ)れ出で給ひき。御名を宇麻志阿斯訶備比古道神(うましあしかびひこぢのかみ)と申せり。 #0031【原始太陽系のすがた】>>

 また、その立ち騰がれる物は、清く澄みて明らかなる物にて、後に天日と為れる物なるが、その上方に就て神生れ出で給ひき。御名を天之常立神(あめのとこたちのかみ)と申せり。
 また、立ち騰がれる物の後に遺れる物に、根と為りて垂れ下れる物ありて、その物に就ても生れ出で給ひき。御名を国之常立神(くにのとこたちのかみ)と申せり。
 また、その神たちに追ひすがひて生れ出で給ひし神を、豊斟渟神(とよくむぬのかみ)と申せり。この垂れ下れる物は、後に離れ絶えて、今も現に仰ぎ視る月輪と為れるなり(近時、泰西人の説には、月の地球より離れて今に至るには、五千六百万年を経たるといへり)。
 豊斟渟神の後にも、宇比地邇神(ういぢにのかみ)、須比智邇神(すいぢにのかみ)など申す神たち、八柱生れ出で給ひ、最後には伊邪那岐神、伊邪那美神も生れ出で給へり。 #0032【太陽の成立】>> #0035【神代第一期補遺(1)】>>

 然るに、高皇産霊神・神皇産霊神は、天地万物を鎔造化育せさせ給ふ霊妙不測の大神にして、この大神は、かの清く澄みて立ち騰がれる物を、今も噡(せん)さくる天日の如く造らせ給ひて後に、その造らせ給ひし時に用ひさせ給ひし天沼矛(あめのぬほこ)といふ矛を、伊邪那岐・伊邪那美二柱の神に授け給ひて、天日と為り、月輪と為りて、或は立ち騰がり、或は垂れ下りて、後に遺りて在る一物を国土に造り固め成せと宣(のたま)ひし儘に、二柱の大神は天之浮橋(あめのうきはし)といふに立たせ給ひて、その矛を以て、大虚空中に遺りて漂へる一物を、国土に掻き成し給ひて、風・火・水・金・土、五元の神たちをはじめて、国をも生み、人をも生み、鳥獣草木などをも生み給ひき。 #0034【地球の修理固成】>> #0036【神代第一期補遺(2)】>>

 然れども、二柱の大神の、この鎔造化育の御功(みいさお)は、皇産霊神の御霊徳に頼りてなれば、二柱の大神の御子と坐す日神・月神も、天地の鎔造を以て皇産霊神の御功なりと宣ひ、上代は世人もまた然(し)か思ひとれりと覚しくて、先輩もいへるが如く、『神代口訣(じんだいくけつ)』には忌部正通(いんべのまさみち)も、「高皇産霊神は高天原に於て万物化生の神なり」といひ、『伯家(はっけ)部類』には伯家にても言ひ伝へて、「高皇産霊神は人身を生みなし給ふ神徳なり」といひ、『拾遺集』にも、その心を詠める「君見ればむすぶの神ぞ恨しきつれなき人をなど造りけん」といふ歌を載せたり。

 然るに、世には、二柱の大神の国土を生めりといふを疑ひて、国土の神にこそあらめなどもいへれど、これも先輩のいへる如く、神にはあらず、国土なり。国土なりとて、今日見る国土の全体をいへるにはあらず。国土の中心と為りて、土壌を吸引包囲せしめて凝結固定せしむべき物を生ませ給ひしなり。
 神の然る物を生ませ給ひしも例ある事にて、『霊異記』にも、美濃国の女人の石を生みたるに、その石の成長せしかば、諸人も奇異に思ひてありし程に、忽ち伊奈波(いなば)といふ神、人に憑かりて、「これは吾が子なり」と告げ給ひし事あり。
 本邦は神国にて、神の生み給ひし国なれば、外国などの、唯、潮沫(しおなわ)の凝結して成れるとは同じからず。尚、次にいふ神異ども、二柱の大神の後にも、諸神の御国造りに労(つ)かせ給ひし跡どもを見奉るべし。
 
 
 
清風道人
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