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#00639 2020.2.13
祈りの真道(1) -人の生涯は祈りの連続-
 
 
(清風道人云、この「祈りの真道」は宮地神仙道の某古参道士による著述で、道統第四代・清水宗徳先生(道号・南岳)が昭和三十年十二月三十一日付の広報誌に掲載されたものです。 #0382【水位先生の門流(4) -道統第四代・南岳先生-】>> )

客「今日は一つ祈る心の神秘性とその威力、それに正しい祈り方についてお話願ひたいのですが。」

主「ご存知の如く、祈る心は母の乳房を慕い求める嬰児(みどりご)の叫び声のやうに、最高の神界に幽政を執り給ふスメガミ達、幾百千の霊界に活動し給ふ幾千万の仙真等、幽界に修業し給ふ遠い神代よりの各人のミタマ達を呼び奉(まつ)り、慕い奉る心の呼び声であり、人間の霊的本能であります。
 司馬遷の言葉にも、「天は人の始であり父母は人の元である。それで人は窮すると必ず元へ復(かえ)るものだ。だから労苦して悩みあぐねた時、未だかつて上天を呼ばない者はない。惨憺(さんたん)と心が痛む時、どうして父母の名を呼ばない者があらうか。」とあります。
 ビョウビョウと吹き荒(すさ)ぶ浮世の木枯らしに、心(しん)の臓も凍ゆるばかり吹きさらされた時、私達は平生のタノミとする見識も財産も意地もハリも一切打ち砕かれて、ただ一筋に浄暗の神殿の奥深く揺らぎかがよふ金色のみあかしを焦がれ求めますね。
 この小さな自我をフリ捨てゝ神の愛と光を欣求(きんきゅう)する姿こそ祈りの心であります。この自分の非力無力を悟って我を空しうした祈りの心にこそ、神の無限の力は朝の潮(うしお)の如く流入して来るのであります。
 ですから人間の持つ精神力霊力の内で、この祈りの心こそ最高最霊の威力であります。そしてこの祈りの威力をイカに正しくイカに強くイカに永く発揮するかによって、各人の現界生活に於ける人格なり徳業の高下正邪がキマルのであり、また幽界生活へ入ってからの霊格なり霊徳の地位も自ずから定まるのであります。

客「多少人格もあり相当地位もある人物で、神様に一度も手を合わせた事のないのを自慢にしてゐる人もありますが、かゝる人々には祈りの心も祈りの力もないのでありませうか。」

主「吾国の古い所伝によりますと、この大宇宙世界はアメノミナカヌシの大神様の祈りの心の表現でありまして、その祈りの心の表現である森羅万象は、一つとして祈りの心を持ってゐないものはないのであります。 #0210【神道宇宙観略説(1) -宇宙の大精神-】>>
 ましてこの地の世界の万霊万物はイザナギ、イザナミの二柱の大神様の国生みの祈りの心によって顕現したものでありますので、どうして祈りの心のない生物が一つとしてありませう。況(いわん)や人間は神のミタマを賜りし神の分霊(わけみたま)であるにおいておやです。 #0473【扶桑皇典(3) -天地開闢・上-】>> #0628【霊魂と肉体(6) -霊魂の種子-】>>
 故に祈る心のない人は一人としてこの地上に存在しないのであり、又その存在を許されないのであります。信仰の対象の有る無しに関せず、万人皆日々夜々に祈りの生活をしてゐるのであります。
 例へばいかに無神論者であっても、稚(いといけな)い愛児が高熱に魘(うな)されて目はあらぬ方を見つめ、唇も焼き切るばかりの熱い息を吐いてゐる時、寸刻も早く熱を取り除いてやりたい、何とかして治してやりたいと念願せぬ人はありますまい。その快治を念願する心すなはち祈りの心であります。
 吾々人間は平生無事の時でも、現在に対してか未来に対してか、家庭についてか社会についてか、四六時中絶えず何等かの念願を抱いてゐるのであって、云はゞ祈り続けの生活をしてゐるのであります。又その念願の解決と満足に全力を傾注してゐるのであります。
 神様は寛仁大度であらせられるので、その神を信じると否とに関はらず、その念願と努力に応じて応分の福徳を与えて居られます。しかし正しくない願ひと努力に対しては、時に峻烈なる批判と訓戒である病難とか災厄をお加へになるのであります。」

客「祈る心は何故に神様を始め万霊万物に感応するのでありませうか。」

主「祈念する心は肉体の五官を超越して直ちに神界(幽界)に自分の思念を送信する精妙なる発信機であります。神道ではこの心をサキミタマ(幸魂)と申し、大国隆正先生は「サキミタマのサキは「割」の字の心であって、我が魂を二つにも三つにも百にも千にもサキ分ちて他人の身にも入れ、その聞く人の心に届かしむるものなり」と申して居られます。
 これは勿論対象が人だけでなく万霊万物に送霊するハタラキ(徳)を有してゐるものでありますが、祈る心は又必ず感応を求めるもので、この感受する心をクシミタマ(奇魂)と申して、幾百千の霊界よりの送信をキャッチする精巧な受信機であります。
 隆正翁は「クシミタマは人のタマの我身に入るなり、神力応護は神のミタマが吾に入るものにして、これをクシミタマと云へり。クシミタマのクシは「串」の字の心なり、見聞思慮を合せて刺し貫き留め置くを云ふ」と申して居られますね。
 感受する心は消極的であって、祈念する心は積極的でありますが、これは二つにして一つ、一つにして二つの微妙なるハタラキを持って居り、祈念=感受=祈念=感受=祈念と環(わ)の果てしなきが如く活動してゐるのであります。
 又この二つの霊を自在に駆使するのがナオヒノタマ(本霊)であり、この三つの至貴の霊が神より賜ひし分魂であります。 #0038【一霊四魂】>>
 この心は天より来りて人間の肉体の中に入ってゐるのでありますから、地上で生れた肉体が地の引力肉の引力に引かれてゐるやうに、この心は天の引力霊の引力に絶えず引かれてゐるのであります。中でも祈りの心は、「もとつふるさと」の天を恋(した)ふる私達の自ずからなる心のアラワレであり、又「もとつみおや」の私達を呼び寄せ給ふ天の引力に応ずる心であります。
 要するに祈る心は私達の肉体の中に住んでゐる神の心であるが故に、神界に坐しますスメカミ達を始め同じく神のミタマを賜ってゐる万霊万物に自在に感応道交できるのですありますが、これは既に感応とか感合とかの水臭い表現で云ひ表せない、切っても切れぬ血の繋がりであります。
 ですから私達は一原子一霊子ほどの疑念を持つことなく天に祈り地に祈るべきであります。また時にはあまり固くならず、花より赤いロマンスでも、独坐す幽篁(ゆうこう)の裏、弾琴(だんきん)また長嘯(ちょうしょう)すの清福でも、自在にオネダリすべきであります。」
 
 
 
清風道人
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