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#00210 2013.1.5
神道宇宙観略説(1) -宇宙の大精神-
 
 
 この「神道宇宙観略説」は、中山神社宮司・美甘政和(みかもまさとも)先生が大正5年に脱稿された著述です。美甘先生は、明治~大正時代における神道界の重鎮・宮地厳夫先生とも親しく交流をもたれた国学者でした。(編集及び現代語訳:清風道人)

 方今、世で行われているところの宇宙観の各説は、いずれも今日の天体を観察したもので、形而下物質上の可知的宇宙観というべきものですが、未だいずれの説も懐疑の内にあるもののようであります。私がこれから述べようとしている神道宇宙観は、形而上不可知的というべきもので、実在する天地各星の未だ成らざる開闢(かいびゃく)以前の宇宙観より論じるものであります。
 これは、知識しようと思っても困難なことのようですが、我が神国には幸いにして、神代の昔より伝え給える神伝書があるために、その神典を元にして、今日の実在天地の現象に照らし合わせ、道理を推して帰納すれば、開闢以前の宇宙といえども窺(うかが)い知ることができるのです。 #0093【世界太古伝実話(2) -古伝と神話-】>>

 従って私はこの観察によって、開闢以前の宇宙はいかなるものかを考究するのですが、まず一言でこれをいうならば、大宇宙なるものは、始めもなく終わりもなく、無量無辺のものであるために、東西南北の別もなく、時間空間を計ることも遠近上下前後の別もないというより他に無いものであることは誰にでも想像し得ることでしょう。そして今日でも大宇宙は開闢以前と同じで、前も後も右も左も区別のあるものではなく、これに前後遠近があるように見えるのは、開闢以後、各星班列の天体ができたからであります。禅家にいわゆる「本来無東西何所有南北」というのもこのあたりの消息であり、また「空即是色色即是空」というのも同じであります。

 さて、まず今日の実在天地の万象より考えるに、開闢以前の宇宙間には何物も無かったかのように思われますが、実はその内に実在天地の各星を始め、万象と成るべき元要素というべきものがあったということは疑いのないことで、大宇宙が真の空虚であれば無より有を生じることとなって道理を外れますので、必ず各星や万象と成るべき元要素が開闢以前より備わっていたということは明らかであります。
 その元要素というべきものは何物かといえば、我が神典の研究によれば、霊と気と質との三元に帰するのであります。西洋哲学においては、多く神物二元論あるいは一元論ですが、真理は必ず三元でなければならないことは、論を追うごとに明白になって来るはずです。 #0027【ビッグバン以前の宇宙】>> #0028【霊・気・質の関係】>>

 我が国の神伝によれば、宇宙には無始より宇宙の大精神ともいうべき中心の大霊が坐(ま)し、その御霊動によって宇宙間に充満する三元の原種がしだいに原々子と成り、原子と成り、分子と成り、元素と成って、その三元の分子元素がしだいに集まって実在天地各星が成立すべき元要素と成ったことが窺われますが、天地開闢の期が至った時には、その集まった三元の分子要素はしだいにガス体と成り、星霧と成り、液体と成り、固体と成って、実在天地の各星球と成ったものと考えられます。開闢以前には、この三大原種は未だ何ともいうことのできない無形物のようですが、その中に天地組織の元要素を含んだものであり、開闢以前よりしだいに順化しつつ、遂に有形の万象と変化し、実在天地が成立したということは、誰にでも道理を推して知られるはずであります。

 そして、ここに一大研究を要するのは、開闢以前と以後を問わず、大宇宙には必ずその大宇宙の精神が無ければならないということです。宇宙に精神というものが無ければ、その宇宙間に成立した万象に、精神あるものを造化し給うことはできない道理で、無より有を生じないのと同じであります。従って、宇宙には開闢以前より大精神があったということは疑う余地はないはずで、ならば何物が宇宙の大精神であるかということは、未だ他の学界の論には聞こえませんが、我が神代の神伝によって、それを窺い知ることができるのです。

 この大精神は、未だ宇宙の中心である別天(ことあめ)に天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)として立ち給う以前は何と名付け奉ることもできませんが、仮にいえば「大元霊」と称し奉る他ありません。この無始より宇宙の中心霊として坐(ま)す大元霊が、実在天地成立の始めに当たり、御自ら隠身(かくりみ)を以て宇宙の中心である別天に立ち給い、開闢後の今日といえども宇宙の大精神が大元霊天之御中主神に坐すことは、その御名の上においても窺い知られるのであります。 #0026【宇宙のはじまり】>> #0029【造化大元霊】>> #0033【「別天」とは?】>>

 その別天というべき宇宙の中心を指して、中国では大極と云い、また老子は玄と云い、仏者はこの極を指して真如(しんにょ)と云うようですが、いずれの説にもこの極に宇宙を統御し給う神霊の坐(ま)すことは伝えられておりません。しかしながら、我が神典にはこの神霊のことが伝えられており、実在天地はこの大元霊の御霊動によって成立したことが窺われるのであります。
 
 
 
清風道人
カテゴリ:神道宇宙観略説
 

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