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#0034 2010.6.3
地球の修理固成
 
 
 その後の「神世七代(かみよななよ)」と呼ばれる時代の最後に、伊邪那岐神(いざなぎのかみ)、伊邪那美神(いざなみのかみ)と呼ばれる男徳(膨張力)と女徳(縮引力)をそなえた陰陽二柱の神が生まれ、別天の神より「この漂へる国を修理固成(つくりかためな)せ」という勅命を受け、「天沼矛(あめのぬほこ)」を賜わったことが『古事記』に記されています。 #0030【天地万物造化のはじまり】>> #0032【太陽の成立】>> #0033【「別天」とは?】>> 
 「この漂へる国」とは、原始太陽と同じように、まだ完全に凝結する前の原始地球のことですが、これを安定させるために別天の神から賜わった神器が「天沼矛」と呼ばれるものです。 #0031【原始太陽系のすがた】>>

 
「二柱の神、天之浮橋(あめのうきはし)に立ち、その沼矛(ぬほこ)を指し下して画(か)きたまへば、塩こをろこをろに画き鳴して引き上げたまふ時、その矛の末(さき)より垂(したた)り落つる塩、累(かさ)なり積もりて島と成りし。これ淤能碁呂島(おのごろしま)なり。」『古事記』

 塩は火の気を多く含有しているものですが(盛り塩など、邪気祓いに塩を用いるのはこのためです)、この時は原始地球がまだ太陽から分離したばかりで、マグマ(当時は「マグマ」という言葉はありませんので、本文中では「塩」と表現されています)がドロドロと流動しているようすがうかがわれます。この段(くだり)の内容を簡単にいえば、伊邪那岐・伊邪那美二柱の神は、天神から賜わった神器である天沼矛の霊力によって、地球の元になるもの(現在の地球の中心核)を凝結して安定させ、それを淤能碁呂島(自ずから凝り締まれるもの)と呼んだということになります。
 そして、雌雄二柱(めをふたはしら)の神はこの淤能碁呂島に天降り、八尋殿(やひろどの)と呼ばれる大宮を造営し、「合為夫婦(みとのまぐわい)」と呼ばれる神術によって地球の修理固成を行いますが、天沼矛は地軸(天の御柱)となって施運がはじまり、地球が膨張しながら凝結していくようすが伝えられています。

 しかしその神術において、男性神が右方向に旋回し、女性神が左方向に旋回した後、女性神が男性神より先に言霊(ことだま)を発してしまったため、地球の修理固成とは逆の作用が起こり、「水蛭子(ひるこ)」と呼ばれるものが誕生します。『日本書紀』の伝に「已(すで)に三歳(みとせ)になるまで脚なほ立たず」とあるように、この水蛭子は地球の大地とはならず、これは原始月球体とでもいうべきもので、神代第三期の須佐之男命(すさのおのみこと)の時代には地球から完全に分離して月となり、地球の内部にあった黄泉国(よみのくに)が月に移されたことが伝えられています。 #0006【太陽と月と地球の関係】>>
 昔から日本では、女性から男性に対して求愛することはタブーとされてきましたが、この伝説が元になっているものと思われます。

 その後「国生み」の段には、この二神の神術によってさまざまな島が生まれることが伝えられていますが、この時代の地球はまだ海も存在していませんので、この「島」とは「締まれるもの」という意味で、後に大陸や山脈となる地表の凝結を表しているものと考えられます。

 『古事記』や『日本書紀』などが宇宙創成の物語であることを論じてきましたが、これほどまでのことが示されているとすれば、なぜ「これすなわち地球の原種なり」とか「この時月球の原種現れし」などとハッキリそのことを本文に明示していないのだろうか?という疑問は誰もが感じるところでしょう。しかし、ご神名に表された意味をやまとことばによって読み解き、文脈の前後を照らし合わせながら道理に訴え、なおかつ眼前に存在する自然界の現象を踏まえ、先入観を取り去った公明正大な心で触れることによって、はじめてその真理をうかがうことができるということは、まさに眼前に姿をハッキリと現すことなき神々によって人間界に示された神伝(真伝)というべきでしょう。また、世界にも類を見ないこのような真伝が日本に残されているということを、とくにわたしたち日本人は知るべきでしょう。

 宮地厳夫先生と親交があった美甘正和(みかもまさとも)先生(1835-1918)は、著書『天地組織之原理』において、神代を第一期から第五期に分けて考察されていますが、それによると、ビッグバンからここまでが神代の第一期で、この時代はいわば「物質変化の時代」とされています。その後の第二期は、風・火・土・金・水を司る五元神をはじめ、造化(生成化育)を分担する神々が次々に誕生する「神霊変化の時代」であることが伝えられており、今のような肉体をそなえた生命体が地球上に生息するための環境がしだいに整えられていくようすがうかがわれます。 #0002【森羅万象を説く「五元」の説】>> #0026【宇宙のはじまり】>> 
 
 
 
清風道人
カテゴリ:日本の神伝
 

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#0033 2010.5.28
「別天」とは?
 『古事記』や『日本書紀』の本文冒頭部分が、ビッグバンから太陽系の成立にいたる過程を表していることを述べてきましたが、五柱の別天神(ことあまつかみ)が鎮まる「別天」とは何を意味しているのでしょうか? #0030【天地万物造化のはじまり】>> #0031【原始太陽系のすがた】>> #0032【太陽の成立】>><
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#0032 2010.5.22
太陽の成立
「次に国稚(いし)く、浮脂(うきあぶら)の如くして、海月(くらげ)なす漂える時に、葦牙(あしかび)の如く萌え騰(あ)がる物によりて成りませる神の名は、宇麻志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)、次に天之常立神(あめのとこたちのかみ)、この二柱(ふたはしら)の神も独神(ひとりかみ)成りまして、隠身(かくりみ)なり。上の件(くだり)の五柱
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#0031 2010.5.16
原始太陽系のすがた
 『古事記』本文冒頭の「天地初めて~隠身なり」まではビッグバンによる天地開闢(かいびゃく)に関する伝承ですが、それ以降は太陽系の成立に関することが伝えられています。

「次に国稚(いし)く、浮脂(うきあぶら)の如くして、海月(くらげ)なす漂へる時に、葦牙(あしかび)の如く萌え騰(あ)がる物によりて成りませる神の名(みな)は」『古事記』

 ま
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#0030 2010.5.10
天地万物造化のはじまり
「天地(あめつち)初めて発(ひら)けし時、高天原(たかまのはら)に成りませる神の名(みな)は、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、次に高御産巣日神(たかみむすびのかみ)、次に神産巣日神(かみむすびのかみ)。この三柱(みはしら)の神は、みな独神(ひとりがみ)成りまして、隠身(かくりみ)なり。」『古事記』

 さて、天之御中主神 
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#0026 2010.4.17
宇宙のはじまり
 太陽、地球、月の関係については簡単に前述しましたが、 #0006【太陽と地球と月の関係】>> 宇宙の成立に関しても、日本の神典を読み解くことによって明らかになってきます。

「天地(あめつち)初めて発(ひら)けし時」『古事記』本文冒頭

 前にも述べましたが、「やまとことば」は漢字が伝来する以前から古代日本で使われてきましたので
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#0006 2009.12.29
太陽と月と地球の関係
 ここで、日本古学の見地からみた太陽と地球と月の関係について、簡単に説明しておきたいと思います。
 太陽系の成立に関しては、まずビッグバンの後に太陽が結び成され、それから各諸星が細胞分裂のように太陽から分離したという説が伝えられています。つまり太陽と各諸星は母子のような関係にあり(そのため各諸星は太陽のまわりをずっと旋回しています)、太陽の黒点
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#0002 2009.12.25
森羅万象を説く「五元」の説
 人類は古来より、目の前にある自然界の事実や、あるいは宇宙間に存在するすべてのものごとを研究し、説明を試みてきましたが、各国々によってその表現方法は異なります。現在の物理学では、水素・酸素・炭素・窒素を四大元素とし、それからさらに細密に分析すれば、百数十の元素に分類されます。そして、この元素に「エネルギー」という概念を加えてあらゆる現象を説明しています。
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