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#00219 2013.2.28
神道宇宙観略説(10) -物質万能から神霊万能へ-
 
 
 この「神道宇宙観略説」は、中山神社宮司・美甘政和(みかもまさとも)先生が大正5年に脱稿された著述です。美甘先生は、明治~大正時代における神道界の重鎮・宮地厳夫先生とも親しく交流をもたれた国学者でした。(編集及び現代語訳:清風道人)

 気・質の二者にも各々幽顕の両性があることを考究してきましたが、これは方今の諸学においては未だ論じられないことですから読者の方には疑いあることと思われます。しかしながら、およそ天地の間は幽顕の両性で全ての万象が成立していますので、肉眼で見える限りの研究ではその真は得難いのであります。

 まず天地間の大きなものからいえば、天体の各星より我が地球に至るまで、肉眼で見えるところの物質星球が万古不易に大々的活動を行うのは、物質そのものが活動するのではなく、肉眼で見ることのできない霊の働きに従って気力が活動させるのですが、その気力というのも無形に属するものであります。
 これを自己の一身について考えても、人身なるものは全て幽顕の両者で働いているのであり、その幽顕の二者の内いずれが重要かといえば、幽の方が本位であります。なぜなら、心意気力の幽物が無く、顕物である物質身体だけでは何の役にも立たないからです。 #0213【神道宇宙観略説(4) -人は万物の霊長-】>>

 天地の万象の組織は全てこのように幽顕の二つで創造されたものですから、幽顕の両方に目を付けて考えて見なければなりませんが、その活動の気力といい、物質といい、両者共に幽顕の両性があり、気には真幽気と半顕気の二者があります。真幽気とは目に見えない幽界に属するもので、半顕気とは、同じように目には見えませんが、顕界に属する電気・磁気・風気などです。質に至っては万象ことごとく肉眼で見えますが、この質にも顕界よりは見ることのできない幽質というものがあることは前述したとおりです。 #0215【神道宇宙観略説(6) -幽質と顕質-】>>

 我が神代の神々の幽顕相通の御神体を窺えば、全て幽質によって御成立されていますので、ある時は現れ給い、ある時は隠れ給うなど幽顕相通御自在に坐(ま)すことは前にも述べたとおりですが、顕界の今日の人類も、深く神伝より推して考究すれば、その顕体の中には幽体なるものが自ずから備わっており、人は皆幽顕両体の重複体であり、この両体の重複が二つに分かれる時、霊魂は幽体と共に幽界に入るのであります。 #0010【「死」と呼ばれる現象】>> #0011【霊魂が主か肉体が主か?】>> #0218【神道宇宙観略説(9) -善悪の存在について-】>>

 この幽体というものは顕界よりは見えませんが、幽中で霊魂に備わる幽身体で、その体は霊魂と同じように顕質を通貫することも自在ですので、顕質によってこの幽体を損なうことはなく、幽質によって顕体を損なうこともありません。身後、未だ高尚な神霊界に帰することができず、幽冥にあって霊魂向上の修練中である人魂が、たまたま顕界に現れるのを幽霊といいますが、これは刀でも斬れず、鉄砲で撃っても当たらないのであります。 #0040【魂と心の関係(2)】>>

 近来、西洋各国でも、死後幽中において未だ心霊向上の修練中である人魂を研究する学派があり、交霊術などといって、幽中の人霊を霊媒婦によって呼び出し、幽中の人魂生活などを尋問するのみならず、その霊体を出顕させて写真に撮影することなどが行われているようですが、未だ幽界の人魂生活の実消息を告げる幽霊は無いようです。これは、幽中の神機を洩らしてはならない神則によるためであるか、またはその霊が未だ心魂向上の修練中で、幽中生活なるものを己も未だ明らかに知らないかによるものと思われます。
 方今の物質万能主義の世において、幽界の神機を窺おうとすることは向上の学というべきですが、しかしながら外国には神霊の大元にさかのぼることのできる実伝が無いために、今の人魂研究は未だ初歩であり、真神の坐す高尚な幽界研究ではないようであります。 #0094【世界太古伝実話(3) -最も早く開けた国-】>>

 我が国においても幽魂を呼び出す種々の方法が古くから行われており、修験者や山伏が行う神降しや生霊死霊の幣憑(へいづけ)などを始め、巫子などの霊媒婦によって幽中の人霊を呼び起こすのですが、これらの術は至って下等なものとして取り扱われており、多くの人は幽霊の存在など信じないものですが、我が神道においては、その実は厳存するものであることの疑いのない証跡が古来より枚挙にいとまがないのであります。しかしながら、後世に至ってはただ怪談としてこれを研究しないために、顕界の研究のみに捉われて、遂に幽界や幽霊があることを忘れるに至ったものと思われます。 #0163【神仙の存在について(1) -有神論で成り立つ日本の国体-】>>

 物質万能主義の西洋各国においてさえ幽界相通の道を開こうとしている今日において、我が神国において神霊の研究に後れるようなことがあっては、古来より神国と自称してきた我が国人の恥ずべきことではありませんか。人の死後、幽霊というものがあることからも、人は全てその顕体よりも精神に重きを置いて造化されたものであることを窺い知るべきであり、もはや物質万能の時運は既に過ぎて、神霊万能主義と交代しようとしている時運が到来しているような趣きがあります。そして、幽界相通の道が開かれれば、世の中は自ずと泰平になるのであります。

(清風道人云、いわゆる“平田派”国学者たちは、神典の研究と共に幽界研究にも心血を注いでこられましたが、そこに一貫して流れる精神は「今の世に栄えを施すことにはならなくとも、幽顕の玄理を天地(あめつち)と共に長久(とわ)に後世に残せば、いずれ世に栄えを施すことになる」という博愛の心や深い温情から出ずるもので、決して新興宗教を興して教組となり、名声や富を得ようというような邪心によるものでないことは明らかです。
 思えば誰もが皆、自ら生まれようとして現界に生まれ出てきた訳ではなく、父母や環境を選ぶ自由も与えられずに人生の出発点に立たされ、「我思う、故に我あり」と自覚した時には、その好むと好まざるに関わらず、宿命を担った人生の第一歩を踏み出していました。
 そして「人生とは何か、人生いかに生きるべきか」を人生観と称し、人は皆それぞれの人生観に基づいて生きて行きますが、その人の抱く人生観によって生き方が大きく左右されることは疑いのないところでしょう。
 そこで最大の問題は「最も正しい真の人生観とはいかなるものか」ということになりますが、この「人生観」は「生死観」と換言してもよく、帰幽後(あるいは生前)の世界である幽界の実相や魂の行方が明らかになれば、自ずと「現界生活とは何か、現界生活をいかに送るべきか」の答えも明白になるはずで、先師たちによってもたらされた幽界の実消息は、まさしく人生の道標となるべきものであると確信致します。 #0144【『仙境異聞』の研究(9) -人や鳥獣の魂の行方-】>> #0159【『仙境異聞』の研究(24) -人の真道とは?】>> )
 
 
 
清風道人
カテゴリ:神道宇宙観略説
 

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 霊・気・質三元の内、気なるものは霊の次位にあって、天地間の生々の活動を司る勢力ですが、この気は霊に属し、ま
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#00163 2012.3.31
神仙の存在について(1) -有神論で成り立つ日本の国体-
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 これより神仙のことについてお話いたします
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#00159 2012.3.7
『仙境異聞』の研究(24) -人の真道とは?-
『仙境異聞』( #0136【『仙境異聞』の研究(1) -概略-】>> )より(現代語訳:清風道人)

平田先生 :ある人が冗談半分で寅吉に云った。
「私はこの世に住んでいても侘(わび)しいだけだ。山人になりたいと思うのだが、山へ帰る時に私も伴って連れて行ってくれないか。」

寅吉はそれを真面目に受け止め、居直って云った。
「それは
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#00144 2011.12.14
『仙境異聞』の研究(9) -人や鳥獣の魂の行方-
『仙境異聞』( #0136【『仙境異聞』の研究(1) -概略-】>> )より(現代語訳:清風道人)

平田先生 「人の魂の行方はどのようになるのかを師に聞いたことはないか。」

寅吉 「まず人の魂は、善にも悪にも凝り固まりますので、固まって消えることなく、中でも悪念が凝結した魂は、消える期(とき)なく、妖魔の群れに入って永く神明の罰
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#0094 2011.3.23
世界太古伝実話(3) -最も早く開けた国-
 この話は、大正3年に行われた宮地巖夫先生(1847~1918、宮内省式部掌典として明治天皇の側近を務められた明治における神道界の重鎮)による講話を筆記したものの一部(導入部分)を、僭越ながら、後学の徒、清風道人が現代語風におきかえたものです。( #0093【世界太古伝実話(2) -古伝と神話-】>> より続く)

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#0011 2010.1.26
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