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#00194 2012.10.1 |
神道講話(1) -人間に与えられた天命-
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この話は、宮地厳夫先生(宮内省式部掌典として明治天皇の側近を務められた明治における神道界の重鎮)が、極めて通俗的に一般の方を対象として神の道を説かれたものです。(現代語訳:清風道人)
神様は何のためにこの天地万物を御造化(おつくり)なされたのでありましょうか。また、人間は何のためにこの世界に生まれて来たのでありましょうか。この訳を知ることは、人間たるものの一大事のことであります。そもそも人間が、自分で万物の霊長であるといいながら、我が身の生まれて来た訳をも知らずにいて、それでも万物の霊長といえましょうか。実に申し訳のないことであります。 #0012【人間は万物の霊長】>>
それならば、人間は何をしにこの世界に生まれ来ているかと申すに、人間はこの世界を修理固成(つくりかためな)すために神様より生まれ出さしめられたもので、神様の御命令、すなわち天命を行いに来ているものであります。それは何によって解るかと申すに、世の始めの時、天神(あまつかみ)様が、人間万物の始祖にまします伊邪那岐命、伊邪那美命の陰陽(めお)御二方の神様に、「この漂へる国を修理固成(つくりかためな)せ」と申す神勅、すなわち天命を御下しなされて、この世界に御天降りになりました。 #0034【地球の修理固成】>>
そこでこの御二方の神様がこの国土に御降りなされて、まず自凝島(おのころしま)と申す島に御着きなされ、その島に八尋殿(やひろどの)と申す御殿を御造りなされて御住みなされることになりました。それはなぜかと申すに、この人間は目に見える身体と目に見えぬ霊魂との二つのものにて成っておりますが、その身体のためには住むべき家が無くてはならず、また食うべき食物が無くてはならず、着るべき衣服が無くてはならないものとなっております。 #0002【森羅万象を説く「五元」の説】>> #0003【「たましひ」の響き】>> #0011【霊魂が主か肉体が主か?】>>
そこで御二方の神様も、まず八尋殿と申す家を御造りなされて御住みなされたのであります。これが人間の職業の始まりで、これによって世界が自然に開けるようになっております。 それはまたなぜかと申すに、この世界の人間が皆、良い家に住みたい、良い食物が食いたい、良い衣服が着たいと思って、農民も職工も商人も士官も教師も、各々その職業を励み務めるところから、野山が田畑となり、村里ができ、市街ができ、都会ができると申すように、自然に開けていくではありませんか。 これはすなわち人間万物の始祖にまします陰陽御二方の神様が、かの天神様より御受けなされた「この国を修理固成せよ」との神勅に御基づきなされて、人間の身体に属(つ)きたる道を御定めなされたものであります。
次に陰陽御二方の神様は、その八尋殿にて始めて夫婦の道を御興しになりました。これが人倫の道と申して人間が交際することの始まりで、これによって世界が自然に治まるようになっております。 それはなぜかと申すに、男女が夫婦になりますれば、その間から子が生まれて父子の倫(ついで)となり、またその子が先に生まれ後に生まれすることによって兄姉弟妹と分かれて兄弟の倫となり、またその兄弟の子孫が相(あい)交際(まじわ)るところより朋友の倫となり、このように致して、自然に夫婦・父子・兄弟・朋友と申す四つの倫が定まりました。
そこで、御二方の神様はなぜまず夫婦の道を御定めなされて、この四つの倫を御定めなされたかと申せば、人が夫となっては誠心を尽くして我が婦のことを思い、また人が婦となってはこれも同じく誠心を尽くして我が夫のためを思い、父となり、子となり、兄となり、弟となり、また朋友となっても、各々誠心を尽くして互いに相思う時は、自然に家も斎(いつ)き国も治まって行くではありませんか。この互いに誠心を尽くすと申す心は、すなわち目に見えぬ霊魂の活用(はたらき)の名でありますから、これもまた陰陽御二方の神様が、かの天神様の「この国を修理固成せよ」と仰せられた天命によって、人間の霊魂に属(つ)きたる道を御定めなされたものであります。 #0036【神代第一期補遺(2)】>>
このような訳で、人間はこの天神様の御命令すなわち天命によって、その始祖にまします伊邪那岐、伊邪那美、陰陽御二方の神様が御創(はじ)めなされた身体に属(つ)きたる務めの職業に励んでこの世界を開き、また霊魂に属(つ)きたる勤めの人倫を守ってこの国家を治め、世界を開くと国家を治めるとを以て道とし、その道を行う者は善人となり、またその道に背く者は悪人となり、善人は善の報いによって幸福を受け、悪人は悪の報いによって災禍に陥り、幸福を受ける者は楽しみ、災禍に陥る者は苦しむこととなっております。これが、神様が御定めなされた人の道の大要であります。 #0040【魂と心の関係(2)】>> #0041【祈りのメカニズム(2)】>> #0159【『仙境異聞』の研究(24) -人の真道とは?】>>
そこで立ち戻って申しますが、始めに申しました「神様は何のためにこの天地万物を御造化(おつくり)なされたのであろうか」という意義であります。 これは今さら申すまでもありませんが、念のために一言申し上げれば、神様は天地を御造化なされてその天地の間に人間を住まわしめ、また万物をも御造化なされて人間がその万物を取り用いて、今申したとおり身体に属(つ)きたる職業と霊魂に属きたる人倫とをよく務め、よく守って、この世界を開き治め、すなわち天神様の神勅のとおり、この国土を修理固成して行くべく御定めなされたものであります。そうしてみると、この天地も万物も皆、神様が人間のために御造化なされたものであると申すことがよく解るのであります。 #0030【天地万物造化のはじまり】>> #0085【地球環境完成への道】>>
これらのことを心得て見ると、人間ほど大切なものはありません。このように致して、我らは幸いにもその得難い人間として生まれたことを等閑(なおざり)に思わず、よく天命に従って本分を尽くし、人たる道を誤らないように致したいものであります。これがすなわち神道の御話の始めであります。 さて、我ら人間は、まずよくこれらのことを心得た上で、なお行わねばならない肝要なことが三箇条あります。その三箇条は、第一に敬神のこと、第二に尊皇のこと、第三に愛国のことの三箇条であります。よって、これよりその三箇条のあらましを御話し申すことに致しましょう。 |
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カテゴリ:神道講話 |
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▼関連記事一覧 |
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#0034 2010.6.3
地球の修理固成
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その後の「神世七代(かみよななよ)」と呼ばれる時代の最後に、伊邪那岐神(いざなぎのかみ)、伊邪那美神(いざなみのかみ)と呼ばれる男徳(膨張力)と女徳(縮引力)をそなえた陰陽二柱の神が生まれ、別天の神より「この漂へる国を修理固成(つくりかためな)せ」という勅命を受け、「天沼矛(あめのぬほこ)」を賜わったことが『古事記』に記されています。 |
カテゴリ:日本の神伝 |
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#0030 2010.5.10
天地万物造化のはじまり
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「天地(あめつち)初めて発(ひら)けし時、高天原(たかまのはら)に成りませる神の名(みな)は、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、次に高御産巣日神(たかみむすびのかみ)、次に神産巣日神(かみむすびのかみ)。この三柱(みはしら)の神は、みな独神(ひとりがみ)成りまして、隠身(かくりみ)なり。」『古事記』
さて、天之御中主神 |
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#0003 2009.12.25
「たましひ」の響き
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日本では、中国から漢字が伝わる以前、「やまとことば」といわれる、いわゆる「ひらがな」が使われていましたが、この「ひらがな」は一音でも発音が可能な音節文字で、その一文字の波動にもさまざまな意味が込められているため、「言霊(ことだま)」ともいわれています。ここではその言霊学によって、霊魂について講究してみたいと思います。
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#0002 2009.12.25
森羅万象を説く「五元」の説
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人類は古来より、目の前にある自然界の事実や、あるいは宇宙間に存在するすべてのものごとを研究し、説明を試みてきましたが、各国々によってその表現方法は異なります。現在の物理学では、水素・酸素・炭素・窒素を四大元素とし、それからさらに細密に分析すれば、百数十の元素に分類されます。そして、この元素に「エネルギー」という概念を加えてあらゆる現象を説明しています。
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