HOME > 『異境備忘録』の研究(52) -墓所の幽界-
 
 
#00367 2015.8.2
『異境備忘録』の研究(52) -墓所の幽界-
 
 
「墓所はその死者の魄霊の常に住む所にして、魂の幽霊となりて出現する時は、必ずその墓にて魄霊と合ひて人影を作るなり。墓所を畑として人糞など不浄物の穢れを掛くる時は、魄霊の魂に合する事難し。如何(いか)に恨みありともその念を達する事能(あた)はず。その不浄物を除き去りては人影を調(ととのえ)る事安ければ、憤りを達するなり。
 又、霊魂の魄霊に合して久しく墓所へ帰らざれば、終(つい)にその所へ帰る事能はざるものにて、別に祠を設けて鎮祀せずんば、浮遊の霊となりて幽中に迷ふものなり。」『異境備忘録』

「幽霊の火となりて見(あらわ)るゝ時は近寄り見るに、瞑目して窺ふ時はその火、人面の如く目口を備へたり。火にて見るゝは多くは魂のみにして、その望み事ある時はその言語は声に見れずと雖(いえど)も、その言語の自然と我が胸中に知れるものなり。」『異境備忘録』

「現界にて刑にかかり首を刎ねられたるが、幽中の掟により、幽霊となりて見れ出る時は、現世にて首を刎ねられたる首無の形にて見れ出るものなり。着したるものとても又同じ。」『異境備忘録』

「幽霊の墓所にて形を作る時は、夜、人の寐(やす)みたる頃、墓に炎燃え、その炎の消て白き帽子に似たるもの土中より脱け出て、それより人の形となりては通常の人の如く歩み行くなり。
 又、墓所より火玉となりて思ふ所に飛び行きて、その所にて形を作るもあり。又、霊魂の弱きは、風の吹く夜は形を結ぶ事難し。又、幽霊の形より後の物の透き通りて見ゆるは、魄霊少なくて魂の霊多し。又、幽霊を背に負ひて重く、或は手を取りたる時に人間の如きは、魂魄充分に合ひたるなり。故に透き通りて後の物も見ゆる事なし。我も幽霊の頼みによりて、負ひたる事も手を取りて行く方へ導きたる事もあり。
 又、墓地には火燐出てその所のみ昼の如く見えて、暫くして闇(くら)くなり、又炎燃え、その側より白き帽子の如き物出て人の形となりて、その所ばかりは草木の葉もよく見えて、暫くして又、人の形は消え帽子の如き物残りて、その帽子より雨の如く小さき人なりて落ちて後闇くなるは、形を作らんとして作り竟(おえ)ざる霊なり。これを側より見る時は気味悪く、身の毛もよだつなり。新墓所等には儘(まま)あるものにて、月の出ぬ曇りたる夜等は折に触れてかゝる事あり。」『異境備忘録』

 普通人の帰幽した霊が多くの場合、先祖達が居住する霊界に引き取られるというような観念は仏家の方でもほとんど常識化しているようですが、それは高級な神仙界の消息を指していものではなく、墓所の地中に存する特殊な魄系の幽界の事情が漏れたものでしょう。 #0009【生命が宿る瞬間】>> #0015【人間の本性は善か悪か?(1)】>> #0016【人間の本性は善か悪か?(2)】>>

 墓所は魄霊の憑泊する所で、仙道ではこれを「結形之幽場」等と称します。人が帰幽後に先祖伝来の墓所に葬られると、遺体或いは遺骨は墓下で数年後には元素に還元しますが、魄霊は霊体として独立し、その魄気の尽きるまで墓地中の幽界で夢幻的な生活を送りますので、とりとめのない霊界消息等はこの特殊な魄系の幽界の消息が漏れたものであり、西洋の霊界通信の消息等にも相当この夢幻的な幽界の消息が混入しているようです。
 俗間のいわゆる「拝み屋」と称する者達がよく人の帰幽当時の状況を憑談し、心残りな繰り言を述べるのもこの類で、帰幽後の霊界というものが総じてそういった夢幻界的なものと速断すると大間違いで、この種の拝み屋の憑談を追及して審神(さにわ)していくと必ずチンプンカンプンになって来るのはそのためです。

 さて、尸解仙の場合は遺体と共に魄気も消失しますので、この種の墓所に属する幽界とは無関係であることはいうまでもありません。 #0222【尸解の玄理(1) -神化の道-】>> #0226【尸解の玄理(5) -本身の練蛻-】>>
 
 
 
清風道人
カテゴリ:『異境備忘録』の研究
 

←前へ

|

次へ→

 

最初の記事からのリスト
 
 ▼関連記事一覧
#00226 2013.4.8
尸解の玄理(5) -本真の練蛻-
 尸解(しか)の道は、道書に「尸解は形の化なり、本真の練蛻(れんぜい)なり、これ仙品の下弟といえどもその稟受(ひんじゅ)して承(う)くるところは未だ必ずしも軽からざるなり」とあり、仙縁ある人である程度の道養の徳を積むに至れば必ず行われるべきもので、屍(しかばね)を解くという解化の過程が極めて短時間に行われ、大いに常態と異なるところから一種異様な
カテゴリ:尸解の玄理 続きを読む>>
 
#00222 2013.3.16
尸解の玄理(1) -神化の道-
 前節の『神道宇宙観略説』において、人の帰幽後について美甘政和(みかもまさとも)先生による解説がありましたが、これは甚(はなは)だ略説のため、尸解(しか)の玄理と合わせてさらに詳しく考究してみたいと思います。  #0219【神道宇宙観略説(10) -物質万能から神霊万能へ-】>> #0220【神道宇宙観略説(11) -陰教と陽教
カテゴリ:尸解の玄理 続きを読む>>
 
#0016 2010.2.22
人間の本性は善か悪か?(2)
 また、魂のはたらきを性(やまとことばではココロネ)といい、魄のはたらきを情ともいいますが、これだけ聞くと、情というものは悪しきものであると思われるかもしれませんが、決してそういうわけではありません。
 性にしたがう情であれば、つまり魄が魂にしたがっているわけですから、これは人間にとって最も善い状態といえるでしょう。しかし性にしたがわない情は、
カテゴリ:玄学の基本 続きを読む>>
 
#0015 2010.2.17
人間の本性は善か悪か?(1)
 人間の本性が善であるか悪であるかについては、主に儒教などで語られてきましたが、日本古学では次のように説かれています。

 実は人間の霊魂の活用には、魂(こん)と魄(はく)の二種類の区別があります。魂魄(こんぱく)というのは漢字の音読みですが、これをやまとことばでは、魂を「みたま」あるいは「をだましひ」、魄を「みかげ」あるいは「めだましひ」と
カテゴリ:玄学の基本 続きを読む>>
 
#0009 2010.1.14
生命が宿る瞬間
 人間という存在が、有形に属する土・金・水の質をそなえた肉体に、無形に属する風と火の性をもった霊魂が宿ったものであることを述べてきましたが、具体的にはわたしたち人間はどのようにして生まれるのでしょうか。 #0002【森羅万象を説く「五元」の説】>> #0003【「たましひ」の響き】>>

 日本古学によると、人間は妊娠
カテゴリ:玄学の基本 続きを読む>>
 


 
 
 
 (google
     新規会員登録
 
カードでのお申し込み
銀行振込でのお申し込み
 
◎特定商取引に基づく表記
◎プライバシーポリシー
SSLページは通信が暗号化され
プライバシーが守られています。

携帯サイトはこちらから
 お知らせ
 
◎(NEW!)新規会員登録停止のご案内
  

◎『日本古学アカデミー全集 第三巻』が出版されました。
  

◎『日本古学アカデミー全集 第二巻』が出版されました。
  

◎日本古学アカデミーが書籍になりました。『日本古学アカデミー全集 第一巻』
  

◎携帯サイトURLはこちら
  

◎今後の掲載予定
  

  Q&A(会員様のみ)
 
質問をする(会員様のみ)
今までの質問へのお答え
◎縄文時代について
◎カード占いについて
◎「福寿光無量」について(二)
◎「福寿光無量」について
◎産土神社について
◎五節句の清祓修法
◎祝詞の発音
◎神道と修験道の違い
◎四魂のバランス
◎神様からのメッセージ
◎肉親の仲
◎魂魄清明
◎マインドフルネスについて
◎同性婚について
◎大祓詞について
◎滝行について
◎産土神について
◎日本古学を深く学ぶために
◎宮中で女性がお仕えするわけ他
◎天孫降臨の地
◎「道を得る」を登山に例えると
◎「縁」は「産霊の徳」によって編まれる
◎宮地神仙道について
◎日本の国体を護持される高僧
◎社会人としてのマナーを守りましょう
◎「悟り」を日本古学的に考えると
◎それぞれの「道」
◎神仙の道を修するということ
◎真偽の見分け方
◎「仙童」寅吉が念仏仏教を嫌った訳
◎道を得る法
◎少名彦那神が常世国へ渡られた理由
◎ヤマタノオロチと熊野
◎先祖供養について
◎イエス・キリストのこと
◎己の器の大きさを知る
◎魂で感じる
◎ダークエネルギーとダークマター
◎宇宙の意思
◎幽界と顕世は表裏一体
◎神仙得道の法
◎輪廻転生
◎仏縁
◎神火清明 神水清明
◎鏡について(2)
◎鏡について
◎洗米の処理
◎霊症から身を守る方法
◎罪穢れの解除
◎霊性向上とは?
◎大物主神(2)
◎大物主神
◎妖怪とは?
◎天皇を祀る
◎神=エネルギー?
◎はらいきよめ
◎人はなぜ生まれ変わるのか?
◎たましひの響き
◎動物について
◎生命が宿る瞬間
◎オーラ
◎「気」について
◎女性と黄泉国
◎アトランティス文明について
◎太陽と月と地球の関係
◎「心と体のリセット」について
 
 閲覧回数トップ10
悠久不死の玄道(1) -人生の疑問-
水位先生と神通(1) -英雄万古の悲哀-
祈りの真道(1) -人の生涯は祈りの連続-
神通の玄理(1) -霊魂凝結の道-
仙去の玄法(1) -日本武尊の尸解-
求道の本義(1) -人生は大移住旅行の一過程-
霊魂と肉体(6) -霊魂の種子-
宮地神仙道修真秘訣(1) -神識と魂魄-
天地組織之原理(116) -皇産霊神の長子-
天地組織之原理(111) -造化と神政-

 
  カテゴリ
玄学の基本
日本の神伝
世界太古伝実話
『仙境異聞』の研究
神仙の存在について
神道講話
清明伝
神道宇宙観略説
尸解の玄理
『幽界物語』の研究
怪異実話
『異境備忘録』の研究
『本朝神仙記伝』の研究
無病長生法
扶桑皇典
君子不死之国考
神剣之記
日本は神仙往来の要路
東王父・西王母伝
混沌五岳真形図説
生類の霊異
空飛ぶ人々
霊魂と肉体
神人感合説
水位先生の門流
祈りの真道
霊魂の研究
悠久不死の玄道
宮地神仙道要義
水位先生と神通
宮地神仙道修真秘訣
仙去の玄法
神通の玄理
求道の本義
真誥
奇蹟の書
天地組織之原理
 
 以前の記事
2024/3
2024/2
2024/1
2023/12
2023/11
2023/10
2023/09
2023/8
2023/7
2023/6
2023/5
2023/4
2023/3
2023/2
2023/1
2022/12
2022/11
2022/10
2022/9
2022/8
2022/7
2022/6
2022/5
2022/4
2022/3
2022/2
2022/02
2022/1
2021/12
2021/11
2021/10
2021/9
2021/8
2021/7
2021/6
2021/5
2021/4
2021/3
2021/2
2021/1
2020/12
2020/11
2020/10
2020/9
2020/8
2020/7
2020/6
2020/5
2020/4
2020/3
2020/2
2020/1
2019/12
2019/11
2019/10
2019/9
2019/8
2019/7
2019/6
2019/5
2019/4
2019/3
2019/2
2019/1
2018/12
2018/11
2018/10
2018/9
2018/8
2018/7
2018/6
2018/5
2018/4
2018/04
2018/3
2018/2
2018/1
2017/12
2017/11
2017/10
2017/9
2017/8
2017/7
2017/6
2017/5
2017/4
2017/3
2017/2
2017/1
2016/12
2016/11
2016/10
2016/9
2016/8
2016/7
2016/6
2016/5
2016/4
2016/3
2016/2
2016/1
2015/12
2015/11
2015/10
2015/9
2015/8
2015/7
2015/06
2015/5
2015/4
2015/3
2015/2
2015/1
2014/12
2014/11
2014/10
2014/9
2014/8
2014/7
2014/6
2014/5
2014/4
2014/3
2014/2
2014/1
2013/12
2013/11
2013/10
2013/9
2013/8
2013/7
2013/6
2013/5
2013/4
2013/3
2013/2
2013/1
2012/12
2012/11
2012/10
2012/9
2012/8
2012/7
2012/6
2012/5
2012/4
2012/3
2012/2
2012/1
2011/12
2011/11
2011/10
2011/9
2011/8
2011/7
2011/6
2011/5
2011/4
2011/3
2011/2
2011/1
2010/12
2010/11
2010/10
2010/9
2010/8
2010/7
2010/6
2010/5
2010/4
2010/3
2010/2
2010/1
2009/12
 
 
 
サイトご利用にあたって プライバシーポリシー 会員規約 お問い合せ
Copyright(C) NIHONKOGAKUACADEMY