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#00126 2011.9.09 |
返矢の神術
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「ここに高木神(たかぎのかみ)、「この矢は天若日子(あめのわかひこ)に賜ひし矢なり」と告(の)りたまひて、即ち諸(もろもろ)の神等(かみたち)に示(み)せて詔(の)りたまはく、「もし天若日子、命(みこと)を誤(たが)はず、悪しき神を射たりし矢の至りしならば、天若日子に中(あた)らざれ。もし邪心(きたなきこころ)有らば、天若日子この矢にまがれ」と云(の)りたまひて、その矢を取りて、その矢の穴より衝(つ)き返し下したまへば、天若日子が朝床に寝(いね)たる高胸坂に中(あた)りてしにき。(これ還矢(かえしや)の本(もと)なり)またその雉(きぎし)還らざりき。かれ、今の諺(ことわざ)に「雉(きぎし)の頓使(ひたつかい)」と云ふ本(もと)これなり。」『古事記』
高木神(つまり高皇産霊神)が戻ってきた矢を八百万神に示して、「もし天若日子が命令に背いたのではなく、悪神を射た矢が戻ってきたのならば天若日子には当たらず、あるいは邪心をもっているならばこの矢にマガレ」といって衝き返し下したところ、矢は天若日子の胸に命中して死に至ったという伝です。 #0125【第二の神使、天若日子降る】>> この「マガレ」とは「ミマカレ」で、後世の「死」という意味ですが、幽顕相通太古の神代においては、神等は尸解(しか)したため、今の人間的な死とは違います。「死」の字を「ミウス」とも読むように、「身失す」ということであり、顕界を去って幽界に入り、顕界における身体を失うという意味です。 #0051【尸解の神術】>> #0109【須佐之男命の安心】>> (今の世でも、死後は無に帰するのではなく魂は存続して霊体となりますが、凡人の霊胎は粗雑で凝結力も弱く、神々の神胎はいうまでもなく、仙術を修した尸解仙(しかせん)によって結成される玄胎(真胎)とも、その精微清陽あるいは寿命において、また魂徳の発動においても、とても比べものにはなりません。 #0072【宇気比の神術】>> #0122【天浮橋は空中の気道】>> ) 天若日子は天津神に対して不忠不義であり、尸解などありえないように思われますが、たとえ久しく地球に属しても、もともとは化生の神体をそなえた天津神ですので、悪神や妖魔の類にもほどほどの幽術があるように、その罪は憎むべきですが尸解したものとうかがわれます。 #0049【化生神と胎生神】>>
また、「その矢を穴より衝き返し下した」とありますが、この時高木神や天照大御神をはじめ八百万神等がますのは高天原、つまり太陽内部の太陽神界ですので、この「穴」というのは地球から見た太陽の黒点ではないかと考えられます。太陽系の惑星は、その多くが原始太陽から分体したもので、この黒点は分体の跡であると同時に、太陽神界から各諸星に通う通路と思われます。 #0006【太陽と地球と月の関係】>> #0031【原始太陽系のすがた】>> #0032【太陽の成立】>>
さて、この時の高皇産霊神が示した神量(かむはかり)は、神政に従わず君位の神の命令に背き、邪心を抱く不忠不義の神はこのようになるものであるということを示されたもので、それを戒めた深い神慮によるものとうかがわれます。天地開闢(てんちかいびゃく)以来、主権を犯して君位に背いた神は未だかつてありませんでしたが、天若日子がこれを犯すこととなり、ついに天津御祖大神(あまつみおやのおおかみ)が罰することとなりました。およそ天地間の主権を犯そうとする以上の罪はなく、神典においても、この天若日子の罪を上回る大罪はなく、またこの罰より重い罰はありません。 #0105【主権君位の神】>>
今日でも邪鬼妖魔を祓う神事として「蟇目鳴弦(ひきめめいげん)の法」が行われていますが、この返矢(かえしや)の神術が起源となっています。これは重秘の神法であり、軽々しく行うものではありませんが、止むを得ない重大な時には慎んで神に祈って行うべきものです。正伝によって行うことはもちろんですが、この時高皇産霊神が行われた神意に習い奉り、私心を離れて清浄な心で行うべきです。高皇産霊神にしても、その大御心に天若日子を憎む心はなく、罪を憎むのであり、また「もし邪心有らば、天若日子この矢にまがれ」という言葉でわかるように、自ら罰するのではなく、その罰も造化自然の大道に任せ、造化大元霊天之御中主神の天地自然の原則のままに罰せられたのです。 #0029【造化大元霊】>>
すべて賞罰は、神政においてもこのように重大なものですので、今の人間社会においてもこの天上の儀にのっとり、私情を離れて造化自然の大道に従って賞罰を明らかにするべきであり、これが日本で太古より神習の儀を尊ぶゆえんです。なお、高皇産霊神ほどの大神でさえ、一神を罰する際にも大元霊天之御中主神の神意にかなうことを量り、また地球に神使を遣わせるにもその都度八百万神の神議によるなど、一つとして独断でない神政の実績を謹んでうかがい奉るべきでしょう。 #0123【民主主義の起源】>> |
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カテゴリ:日本の神伝 |
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▼関連記事一覧 |
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#0072 2010.12.15
宇気比の神術
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「日神(ひのかみ)、素盞鳴尊(すさのおのみこと)と共に相対(あいむか)ひて立誓(うけい)て曰(のたま)はく、「もし汝(いまし)心、明浄(あかくきよらか)にて、凌(しの)ぎ奪ふの意(こころ)有らずば、汝(いまし)の生む児(みこ)必ず当(まさ)に男(ひこみこ)ならむ」と言(のたま)ひ訖(お)へて」『日本書紀』
この『日本書紀』の本文は『古事記
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#0051 2010.8.29
尸解の神術
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「かれ、伊邪那美神(いざなみのかみ)は火神を生みませるに因(よ)りて、遂に神避(かむさ)りましき。」『古事記』
これは、火神を生んだことが原因で、伊邪那美神は遂に地下の幽府に入られたという伝ですが、これを後世の人間的な「死」のように考えるのは大きな間違いです。平田篤胤先生もこのことについて、「神避り」=「葬り去る」などの解説はまったくの誤
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#0049 2010.8.19
化生神と胎生神
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「伊奘諾尊(いざなぎのみこと)、伊奘冉尊(いざなみのみこと)と共に大八洲国(おおやしまぐ)を生みたまひき。しかして後、伊奘諾尊、「我が生める国、ただ朝霧(さぎり)のみ有りて、薫(かお)り満てるかな」と曰(のたま)ひて、すなはち吹き撥(はら)はせる気(みいぶき)に化(な)りませる神の号(みな)を級長戸辺命(しなとべのみこと)と曰(まお)す。また
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#0032 2010.5.22
太陽の成立
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「次に国稚(いし)く、浮脂(うきあぶら)の如くして、海月(くらげ)なす漂える時に、葦牙(あしかび)の如く萌え騰(あ)がる物によりて成りませる神の名は、宇麻志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)、次に天之常立神(あめのとこたちのかみ)、この二柱(ふたはしら)の神も独神(ひとりかみ)成りまして、隠身(かくりみ)なり。上の件(くだり)の五柱
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#0031 2010.5.16
原始太陽系のすがた
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『古事記』本文冒頭の「天地初めて~隠身なり」まではビッグバンによる天地開闢(かいびゃく)に関する伝承ですが、それ以降は太陽系の成立に関することが伝えられています。
「次に国稚(いし)く、浮脂(うきあぶら)の如くして、海月(くらげ)なす漂へる時に、葦牙(あしかび)の如く萌え騰(あ)がる物によりて成りませる神の名(みな)は」『古事記』
ま
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#0006 2009.12.29
太陽と月と地球の関係
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ここで、日本古学の見地からみた太陽と地球と月の関係について、簡単に説明しておきたいと思います。 太陽系の成立に関しては、まずビッグバンの後に太陽が結び成され、それから各諸星が細胞分裂のように太陽から分離したという説が伝えられています。つまり太陽と各諸星は母子のような関係にあり(そのため各諸星は太陽のまわりをずっと旋回しています)、太陽の黒点
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