HOME > 言葉のもつ力
 
 
#0042 2010.7.16
言葉のもつ力
 
 
 心中の想念は魂魄(こんぱく)のはたらきによって起こるものですが、その想念や祈りを表現する言葉もまた霊なるものであることはいうまでもありません。 #0015【人間の本性は善か悪か?(1)】>> #0016【人間の本性は善か悪か?(2)】>> #0017【心の中の葛藤とは?】>>
 伊勢神宮の斎宮内親王(神祭を行う際に中心となる神官)が、幼い頃から忌言葉(いみことば、邪気に通じる汚い言葉)を避け、忌火(いみび、清らかな火)を用いて潔斎し、常に心を神明に通わせて日常を過ごしていたのも意味のあることで、ある特殊な言葉に感(かま)げくる邪神の交渉を避けるために、忌言葉を忌避(きひ)してきたことが伝えられています。

 日本だけでなく、昔から洋の東西を問わず、言葉には霊妙な力が宿っているとされており、その使い方によって人の幸・不幸が左右されるということが語られてきました。『万葉集』には、日本は「言霊(ことだま)の幸(さきは)ふ国」と記されていますが、早朝の神社で朗々と奏上される、やまとことばによる祝詞(のりと)に耳を澄ますと、神の分霊である魂の発動を感じて清々しい気持ちになります。

 最近、諸外国で日本語がブームになっていますが、日本語の特異性は「科学的」にも証明されつつあります。英語やフランス語などで会話をしている時は、知覚を司る左脳が主としてはたらいていますが、日本語で会話をする時は、感覚や直感を司る右脳が主としてはたらいています。つまり日本語は、会話による伝達手段としてだけでなく、想念を波動に変換して、精神エネルギーとして伝達する力が優れているといえます。
 日本の書道では、「いろはにほへと…」と、まずひらがなから習いますが、ていねいに一文字ずつ書くことによって、何か特殊な感覚を覚えます。また、上手な字を書くためには、筆が空間を移動している時、つまりはねてから次の線に入るまでの動きがとても大切なことがわかります。言葉や文字は文化そのものであるといっても過言ではなく、こんなところにも、「目に見えない世界」を大切にする日本の文化がよみとれます。また、食事をする前には「いただきます」、食事を終えると「ごちそうさまでした」と、目に見えない何ものかに対して手を合わせて感謝の意を表しますが、これも世界的に珍しい風習です。

 さて、言葉のもつエネルギーが大きな力をもっているならば、その使い方には十分な注意が必要です。心や魂の傷は肉体の傷と違って目には見えませんが、悪意のこもった辛らつな言葉によって受けた傷は、そう簡単に癒えるものではありません。暴言は、時には生命力を奪い取るほどの殺傷能力をもった凶器となります。否定的な言葉を投げかけられて育った子供は、どこか影のある暗い性格になることはよく知られています。

 平田篤胤先生の門下である参澤宗哲明(みさわむねのりあきら)先生の著述による『幽界物語』には、幽顕両界を交通した嶋田幸安少年を通じて清浄利仙君(せいじょうりせんくん)という神仙から承った内容が記されていますが、それによると、「他人の短所を現し人を嘲(あざけ)るは罪なり。よろしからぬ人にも善功有ることあるべし。一つの過失を挙げて悪人とせぬが吉。ただし、邪見や不信により神罰を蒙(こうむ)れる類の罪を現すは他人への戒めとなり、功徳になるべし。他人の善行を現すは甚(はなは)だ大功なり」とあります。「現す」ということは「顕界へ現出する」ということですので、言葉は言霊となって幽界と顕界を貫くものであり、それが善くも悪くも顕事に大きな影響を与えるのもうなずけます。 #0025【密接に関わりあう顕と幽】>> 神前で奏上される美しい祝詞には、確かに全く悪意が入る余地はありません。

 『古事記』や『日本書紀』などの神典中に見える神々が発する言葉は、どれも美しくどれも妙味を含んでおり、その言葉の前後には必ず「白(まお)す」「詔(の)りたまふ」などの言葉が添えられています。また、それによって大きく宇宙の開展に変化が生じる重い神言があることも伝えられており、貴き神々がいかに言葉を大切にされているかがわかります。このことは天皇陛下や皇后陛下のお言葉を聞けば誰でもわかるはずですが、これは日本人として生まれたわたしたちの特権といえるでしょう。

 想念=祈りを音という波動で表現したものが言葉ですので、ここにも当然「往復循環の法則」がはたらいています。 #0001【「往復循環の法則」という自然の摂理】>> 自分のことは棚に上げて人を罵倒したり、人のダメ出しばかりしている人は、知らず知らずのうちに同じような冷たい陰気に包まれたグループに属しており、こういった人は当然敵も多く、人生を終える時に(もちろん魂は終わりではありませんが)幸せを感じることは少ないでしょう。 #0041【祈りのメカニズム(2)】>> また何とか今世では不幸を免(まぬが)れたとしても、来世はその因縁を背負って生まれてくることになるのかもしれません。 #0013【「生まれ変わり」の事実(1)】>> #0014【「生まれ変わり」の事実(2)】>>
 これに対して、善意の真心のこもった言葉を発する人は、やはり同じような暖かい陽気に包まれたグループに属しており、今世終焉(しゅうえん)の時、暖かくて清々しい感動とともに、その魂は新たな旅に出ることでしょう。

 「情けは人のためならず」という言葉がありますが、目先の小さな欲にとらわれず、世のため人のために尽くすことが、結局は自分に幸いをもたらすということは全く自然の摂理といえるでしょう。
 
 
 
清風道人
カテゴリ:玄学の基本
 

←前へ

|

次へ→

 

最初の記事からのリスト
 
 ▼関連記事一覧
#0041 2010.7.11
祈りのメカニズム(2)
 わたしたち人間が生息するこの地球は半清半濁の世界であり、またわたしたち自身も、神霊の一微分子である魂霊をたまわっていながら、先祖の因縁を背負った魄霊の影響を受け、前世からの宿因を背負っており、この地球世界と同じように半清半濁の存在であるといえます。 #0006【太陽と月と地球の関係】>> #0009【生命が宿る瞬間】>>
カテゴリ:玄学の基本 続きを読む>>
 
#0025 2010.4.12
密接に関わりあう顕と幽
 顕界(人間が五感で感知できるこの世界)が幽界から分離独立した界となった現在でも、自然界には不思議なことがたくさん見られます。 #0024【幽顕分界という歴史的事実】>>
 最近ではミツバチの減少が問題になっていますが、動物が地震や火災を予知して逃げ出すことや、あんなに柔らかくて脆(もろ)い植物の体が、堅いアスファルトを破ってぐん
カテゴリ:玄学の基本 続きを読む>>
 
#0017 2010.2.27
心の中の葛藤とは?
 道教は中国古学ともいえるもので、『雲笈七籖(うんきゅうしちせん)』や『抱朴子(ほうぼくし)』などの道書類には、この魂魄についても「三魂七魄」という説があり、よくその説明がなされています。 #0015【人間の本性は善か悪か?(1)】>> #0016【人間の本性は善か悪か?(2)】>>

 まず三魂とは、その名を「爽霊(そうれい
カテゴリ:玄学の基本 続きを読む>>
 
#0016 2010.2.22
人間の本性は善か悪か?(2)
 また、魂のはたらきを性(やまとことばではココロネ)といい、魄のはたらきを情ともいいますが、これだけ聞くと、情というものは悪しきものであると思われるかもしれませんが、決してそういうわけではありません。
 性にしたがう情であれば、つまり魄が魂にしたがっているわけですから、これは人間にとって最も善い状態といえるでしょう。しかし性にしたがわない情は、
カテゴリ:玄学の基本 続きを読む>>
 
#0015 2010.2.17
人間の本性は善か悪か?(1)
 人間の本性が善であるか悪であるかについては、主に儒教などで語られてきましたが、日本古学では次のように説かれています。

 実は人間の霊魂の活用には、魂(こん)と魄(はく)の二種類の区別があります。魂魄(こんぱく)というのは漢字の音読みですが、これをやまとことばでは、魂を「みたま」あるいは「をだましひ」、魄を「みかげ」あるいは「めだましひ」と
カテゴリ:玄学の基本 続きを読む>>
 
#0014 2010.2.10
「生まれ変わり」の事実(2)
 すでに亡くなった人が生まれ変わったとされる話は、勝五郎の例に限らず、古今東西に数え切れないほどあります。最近では、西洋の精神医学などでも過去世の存在を肯定する医師や学者が増えており、その調査内容や研究成果が発表されたりしています。 #0013【「生まれ変わり」の事実(1)】>>

 ヴァージニア大学の精神科医イアン・スティーブンソン
カテゴリ:玄学の基本 続きを読む>>
 
#0013 2010.2.4
「生まれ変わり」の事実(1)
 人の霊魂には、はじめて神霊の一微分子を付与されて生まれてくるものもあれば、往古より歴代のあいだに、すでに人間として生まれた霊魂が、寿命を終えて一旦幽界へ帰り、さらに再生してまた人間界へ生まれてくるものが存在することが伝えられています。 #0009【生命が宿る瞬間】>>

 平田篤胤先生の『勝五郎再生記聞』には、文政五年(1822年)、
カテゴリ:玄学の基本 続きを読む>>
 
#0001 2009.12.25
往復循環の法則という自然の摂理
 日本古学の自然の摂理によると、宇宙間のすべての存在は、何もかも往(ゆ)きては復(かえ)り、復(かえ)っては往(ゆ)きして、まるで端のない輪のように往復循環しています。たとえば、月は満ちては欠け、欠けてはまた満ちて、満ち欠けが交代しながら循環しています。1日を見ても、日の出とともに明るくなり、日の入りとともに暗くなって、昼と夜とが繰り返されています。
カテゴリ:玄学の基本 続きを読む>>
 


 
 
 
 (google
     新規会員登録
 
カードでのお申し込み
銀行振込でのお申し込み
 
◎特定商取引に基づく表記
◎プライバシーポリシー
SSLページは通信が暗号化され
プライバシーが守られています。

携帯サイトはこちらから
 お知らせ
 
◎(NEW!)新規会員登録停止のご案内
  

◎『日本古学アカデミー全集 第三巻』が出版されました。
  

◎『日本古学アカデミー全集 第二巻』が出版されました。
  

◎日本古学アカデミーが書籍になりました。『日本古学アカデミー全集 第一巻』
  

◎携帯サイトURLはこちら
  

◎今後の掲載予定
  

  Q&A(会員様のみ)
 
質問をする(会員様のみ)
今までの質問へのお答え
◎縄文時代について
◎カード占いについて
◎「福寿光無量」について(二)
◎「福寿光無量」について
◎産土神社について
◎五節句の清祓修法
◎祝詞の発音
◎神道と修験道の違い
◎四魂のバランス
◎神様からのメッセージ
◎肉親の仲
◎魂魄清明
◎マインドフルネスについて
◎同性婚について
◎大祓詞について
◎滝行について
◎産土神について
◎日本古学を深く学ぶために
◎宮中で女性がお仕えするわけ他
◎天孫降臨の地
◎「道を得る」を登山に例えると
◎「縁」は「産霊の徳」によって編まれる
◎宮地神仙道について
◎日本の国体を護持される高僧
◎社会人としてのマナーを守りましょう
◎「悟り」を日本古学的に考えると
◎それぞれの「道」
◎神仙の道を修するということ
◎真偽の見分け方
◎「仙童」寅吉が念仏仏教を嫌った訳
◎道を得る法
◎少名彦那神が常世国へ渡られた理由
◎ヤマタノオロチと熊野
◎先祖供養について
◎イエス・キリストのこと
◎己の器の大きさを知る
◎魂で感じる
◎ダークエネルギーとダークマター
◎宇宙の意思
◎幽界と顕世は表裏一体
◎神仙得道の法
◎輪廻転生
◎仏縁
◎神火清明 神水清明
◎鏡について(2)
◎鏡について
◎洗米の処理
◎霊症から身を守る方法
◎罪穢れの解除
◎霊性向上とは?
◎大物主神(2)
◎大物主神
◎妖怪とは?
◎天皇を祀る
◎神=エネルギー?
◎はらいきよめ
◎人はなぜ生まれ変わるのか?
◎たましひの響き
◎動物について
◎生命が宿る瞬間
◎オーラ
◎「気」について
◎女性と黄泉国
◎アトランティス文明について
◎太陽と月と地球の関係
◎「心と体のリセット」について
 
 閲覧回数トップ10
悠久不死の玄道(1) -人生の疑問-
水位先生と神通(1) -英雄万古の悲哀-
祈りの真道(1) -人の生涯は祈りの連続-
神通の玄理(1) -霊魂凝結の道-
仙去の玄法(1) -日本武尊の尸解-
求道の本義(1) -人生は大移住旅行の一過程-
霊魂と肉体(6) -霊魂の種子-
宮地神仙道修真秘訣(1) -神識と魂魄-
天地組織之原理(116) -皇産霊神の長子-
天地組織之原理(111) -造化と神政-

 
  カテゴリ
玄学の基本
日本の神伝
世界太古伝実話
『仙境異聞』の研究
神仙の存在について
神道講話
清明伝
神道宇宙観略説
尸解の玄理
『幽界物語』の研究
怪異実話
『異境備忘録』の研究
『本朝神仙記伝』の研究
無病長生法
扶桑皇典
君子不死之国考
神剣之記
日本は神仙往来の要路
東王父・西王母伝
混沌五岳真形図説
生類の霊異
空飛ぶ人々
霊魂と肉体
神人感合説
水位先生の門流
祈りの真道
霊魂の研究
悠久不死の玄道
宮地神仙道要義
水位先生と神通
宮地神仙道修真秘訣
仙去の玄法
神通の玄理
求道の本義
真誥
奇蹟の書
天地組織之原理
 
 以前の記事
2024/3
2024/2
2024/1
2023/12
2023/11
2023/10
2023/09
2023/8
2023/7
2023/6
2023/5
2023/4
2023/3
2023/2
2023/1
2022/12
2022/11
2022/10
2022/9
2022/8
2022/7
2022/6
2022/5
2022/4
2022/3
2022/2
2022/02
2022/1
2021/12
2021/11
2021/10
2021/9
2021/8
2021/7
2021/6
2021/5
2021/4
2021/3
2021/2
2021/1
2020/12
2020/11
2020/10
2020/9
2020/8
2020/7
2020/6
2020/5
2020/4
2020/3
2020/2
2020/1
2019/12
2019/11
2019/10
2019/9
2019/8
2019/7
2019/6
2019/5
2019/4
2019/3
2019/2
2019/1
2018/12
2018/11
2018/10
2018/9
2018/8
2018/7
2018/6
2018/5
2018/4
2018/04
2018/3
2018/2
2018/1
2017/12
2017/11
2017/10
2017/9
2017/8
2017/7
2017/6
2017/5
2017/4
2017/3
2017/2
2017/1
2016/12
2016/11
2016/10
2016/9
2016/8
2016/7
2016/6
2016/5
2016/4
2016/3
2016/2
2016/1
2015/12
2015/11
2015/10
2015/9
2015/8
2015/7
2015/06
2015/5
2015/4
2015/3
2015/2
2015/1
2014/12
2014/11
2014/10
2014/9
2014/8
2014/7
2014/6
2014/5
2014/4
2014/3
2014/2
2014/1
2013/12
2013/11
2013/10
2013/9
2013/8
2013/7
2013/6
2013/5
2013/4
2013/3
2013/2
2013/1
2012/12
2012/11
2012/10
2012/9
2012/8
2012/7
2012/6
2012/5
2012/4
2012/3
2012/2
2012/1
2011/12
2011/11
2011/10
2011/9
2011/8
2011/7
2011/6
2011/5
2011/4
2011/3
2011/2
2011/1
2010/12
2010/11
2010/10
2010/9
2010/8
2010/7
2010/6
2010/5
2010/4
2010/3
2010/2
2010/1
2009/12
 
 
 
サイトご利用にあたって プライバシーポリシー 会員規約 お問い合せ
Copyright(C) NIHONKOGAKUACADEMY