HOME > 生類の霊異(30) -狸及び貂(解説)-
 
 
#00597 2019.6.5
生類の霊異(30) -狸及び貂(解説)-
 
 
 狸及びその同族たる貂(むじな)は狐と等しく、我国にて古来妖獣の一流者として怪物相場を定められて居るが、その繁殖力は狐に劣り、又姦獪(かんかい)なことや貪欲や性欲やも又狐ほどに無いから、その状貌も自ずから狐ほどに嫌味が無く、むしろ可愛らしく滑稽である。 #0594【生類の霊異(27) -狐(淫蕩性及び防衛的武器)-】>>

 動物学者や動物園の管理者等が、この日本特産の珍獣に親しむの余りに、古来狸は魔獣たるの冤罪を受けたり等と、これに一抹の同情心を寄せるのも尤ものことである。しかしながら、狸の老いたるものは貉と共に、老狐の人を魅惑するに似たる邪力を人間に投じ得る野獣である。 #0350【『異境備忘録』の研究(35) -鳥獣の進化-】>>

 今日我国にて都鄙(とひ)一般に狐狸属の減少したことは著しい中に、特に狸はこのまゝにては絶種するの虞(おそれ)あるまでに少なくなって居り、自然その魅惑力を実地に研究することは至難である。
 殊に又、種属の衰弱に瀕した動物の原則として、その精神作用も生理力も著しく古へよりも衰微をして居ることも、吾等の研究の支障となって居る。本篇に収録した狸及び貉の事例の大部分が、明治以前のものに係るのは余儀ない事である。

 狸(以下単に狸と書くのも貉を含んだと解せられたい)が人間に加へる悪戯の性質は、狐のそれとは自ずから相違して居る。狐の行為には陰険味が含まれるけれど、狸のは徹頭徹尾、茶目式であるやうだ。
 著者(岡田建文大人)の郷里の野中市では、近所に栖む狸が白昼に台所へ来て、焚火して居る割木(まき)を咥へて床の下に這入り込んだことが何度もあった。人が騒ぐのを興(おもしろ)がってやることである。後に騒ぐのを慎んで居るやうになってからは止めたと云ふ。
 又、著者の母の生家では出入りの老婆・某に随(つ)いて来る古狸が、よく器物を隠匿して人を困らしたことがある。(詳細は後段に載せた)

 狸はその悪戯の一点から考へると、かなり智能者であるらしいけれど、物の理解力は遥かに狐に劣って居る。俗に狐憑(きつねつき)は理を以て責め得るも、狸貉は理責めにかゝらぬと云ふのも経験上のことらしい。狸は狐に比し確かに愚物である。 #0146【『仙境異聞』の研究(11) -狐が人に憑く?-】>> #0506【扶桑皇典(36) -狐狸-】>> #0589【生類の霊異(22) -狐(狐憑現象)-】>>
 
 
 
清風道人
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