HOME > 扶桑皇典(49) -土・木草・田畑の神-
 
 
#00519 2018.2.13
扶桑皇典(49) -土・木草・田畑の神-
 
 
 こゝに土といふは、埴(はに)なり。埴は五穀を始めて、総て草木を養ふ物にて、砂土とは異なり。
 さて、この埴を掌り給ふ神は、埴夜須比売神(はにやすひめのかみ)、またの御名は埴安神(はにやすのかみ)とも、爾保津比売神(にほつひめのかみ)とも申せり。伊邪那美命の御子にて、土を掌り給へば、土神とも申すなり。 #0059【人類の祖先は本当に猿類か?】>>
 この神の御社は、大和国十市(といち)郡畆尾(うねお)に在り。また、山城国愛宕郡賀茂には、波爾(はに)神社と申すもあり。

 木草の神は、保食神の分霊(わけみたま)の神に坐して、一柱は御名を久々能智神(くくのちのかみ)と申して、木の祖(みおや)の神に坐せり。諸々の木どもは、悉くこの神の御霊(みたま)に依りて生(あ)れ出ずるなり。また、一柱は御名を萱野比売神(かやのひめのかみ)と申して、草の祖の神に坐せり。諸々の草どもは、皆この神の御霊に依りて生れ出ずるなり。 #0517【扶桑皇典(47) -衣食住の神-】>>
 この神たちは、飛騨国にては、木母神(きのみおやのかみ)とも、木母国津神(きのみおやのくにつかみ)とも申し、遠江(とおとうみ)国佐野郡には、真草神社とも申すがあり、神代には木草も物言ひし事もあれば、扶桑木如き、朝には筑紫を覆ひ、夕には陸奥を覆ふが如き大木も、この御国には有りし事なり。 #0108【動植物も言語を発する神代の時代】>>

 木には、鬼神の憑かる物か、種々の奇異なる事あり。近く宝永六年の冬、京北の村落の木に餅を生じたれば、取りて炙りて食ひしに、常の餅の如くなりきといひ(『結毦録(けつじろく)』)、また、上総(かずさ)国の大久保といふ地は山の裾野にて、田畑に続きたる所ありて、大木も数多(あまた)生えて在るが、この地の往来の道を深夜に過ぐるに、時としては大木、道に横たはり伏して、通行し難き事あり。然るに、強ひて通らんとする時は必ず怪事あれば、心得たる人は、その時は後方に退きて通らぬが、暫時(ざんじ)にてまた行く時は、常の道と為りて、何の障碍も無しといへり(『一話一言』)、

 また、木を割りて、文字の現るゝ事あるは、人の知れる所の如くなるが、時としては仏画などの現るゝ事もありて、多くは栗木、杉木なるを、文政十二年の夏の頃、江戸谷中にて樫木を切りしに、切口に仏像を描きたるが現れたる事あり(『世事百談』)。
 また、物の知らせに、虫蝕(むしくい)にして種々の文字を現したる事も、諸書に数多見えたるは、いかなる故にかあらん。

 木には、種々の特異なる物あり。亜米利加州の或る島には、自然に水の滴る木ありて、土人は毎日、桶を以てその水を受けて、日用に供ふといふ。その水の滴るは木の枝葉にて、日光を受くれば滴る事、殊に多しといふ。
 また、東方印度にも、一種の異木あり。この木、枝の東方に向へるは大良薬にして、諸病に用ひて特効あれども、西に向へるは大毒ありて、誤りて服すれば、人を殺す事あれど、その理(ことわり)詳らかにする事を得ずといふ(『西洋雑記』)。

 桜は天神の天上より降し給ひし物にて(『御鎮座伝記』)、木草の祖樹なれど、他邦には無き物なれば、漢土の医書にもその説無けれど、桜は実も皮も、邪熱を解し、欝気を散じ、飲食を消化し、痰咳を止め、瘡毒を治する功ある仙薬なり(『大扶桑国考』)。
 桜には大木もありて、『薄遊漫戴(はくゆうまんさい)』には、対馬の日観峰には、昔時、方六里を覆ひ隠すばかりの樹もありしかば、渓谷は常に暗夜の如くなりきといへり。
 また、桜の老木はよく石に化する事ありて、陸奥国の名古会の関の桜樹は、往古、源義家も駒を留めたりといふ名木なりしが、その桜も、今は立ちながら石と化(な)りたるを、平田(篤胤)翁も、その一欠片(ひとかけら)を得たりといはれたり(『大扶桑国考』)。

 桃も霊木なり。神代の時、伊邪那岐命の、桃子に「汝の、吾を助けし如く、顕(うつ)しき青人草の、苦瀬(うきせ)に落ちて苦しまん時に助けよ」と宣(のたま)ひし故事もありて、今も、疫鬼を避くとて、仙家にては特に称揚せる事なるが、往昔は、禁中にて歳暮の追儺(ついな)に、疫鬼を追ふ時の弓には、桃の枝を用ひたり。 #0089【桃の神秘】>>

 松もまた霊木なり。葉も実も脂も、仙家にては長生の薬に用ふる事なるが(『古今医統(ここんいとう)』『法苑珠林(ほうおんじゅりん)』)、道士は常に松葉を食ひ、水を飲みて、穀食を絶てり(『和訓栞(わくんのしおり)』)。然れば、松葉を食ひて飢を凌ぐは、人もよく知れる事なり。
 天長十年八月、飛騨国より、松実の御贄(みにえ)といふを貢物(みつぎもの)に出だしゝ事もあれば(『続日本後紀』)、上代は松の功をも知れりしならん。「子(ね)の日の松」といひて、正月に小松を引く事も、橘守部は、松を若菜として羹(あつもの)などにもせしなりといへり(『山彦冊子(やまびこぞうし)』)。
 優婆塞(うばそく)などは、日常の食料にも用ひしならん。古歌に、「優婆塞が朝菜に刻む松の葉は山の雪にや埋もれぬらん」なども詠みたり(『夫木(ふぼく)集』)。

 田畑の物を守らせ給ふ神は、大年神・御年神・若年神と申す三柱の大神なり。この神たちの御社は、大年神は山城国乙訓(おとくに)郡に、御年神は大和国葛上(かつじょう)郡に、若年神は大和国高市郡に鎮座せりといへれど、御年神社は、今はその所在知れずといふ。然れど、この神たちは、田畑の物を守らせ給ふ故に、年神といふ詞(ことば)は、今も民間に、諸所に在るなり。
 然れば、朝廷にても毎年、祈年祭を行はせ給ひて、年の豊穣を祈らせ給ひ、民間にても新年には、家毎に歳徳棚といふを設けて祭る事なるを、中世以来、仏家の説、暦家の説などを混入して、あらぬ神名を呼び馴れたれども、本は、民家にてもその年の豊穣を祈る為にせし事なれば、古に復して、三柱の神の御名を正しく申して祈らま欲しき事なりかし。
 
 
 
清風道人
カテゴリ:扶桑皇典
 

←前へ

|

次へ→

 

最初の記事からのリスト
 
 ▼関連記事一覧
#00517 2018.2.1
扶桑皇典(47) -衣食住の神-
 衣食住は、人生の大事中の大事なるに、別(わ)きて穀物は、一日も欠く事能(あた)はざる物なれば、人類の危惧騒動も、多くはこの物の欠乏よりして起こる事なり。
 さて、この五穀を掌り給ふ大神は、豊宇気姫神(とようけひめのかみ)と申し、また宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと)とも、保食神(うけもちのかみ)とも申せり。 #0073【鳥獣魚
カテゴリ:扶桑皇典 続きを読む>>
 
#00108 2011.6.8
動植物も言語を発する神代の時代
「すなはち喚(よ)び入れて、その蛇(へみ)の室(むろや)に寝しめたまひき。ここにその妻須勢理毘売命(すせりびめのみこと)、蛇の比礼(ひれ)をその夫(ひこぢ)に授けて云(の)りたまはく、「その蛇、咋(く)はむとせば、この比礼を三(み)たび挙(ふ)りて打ち撥(はら)ひたまへ」と云(の)りたまふ。かれ、教(おしえ)の如(ごと)せしかば、蛇、自ずから静
カテゴリ:日本の神伝 続きを読む>>
 
#0089 2011.2.28
桃の神秘
 「時間(とき)」というものが星々の運行によって生まれることは前述しましたが、 #0027【ビッグバン以前の宇宙】>> 日本では古来より、季節の移り変わりに応じて神祭や祓い清めの行事が行われてきました。 #0018【「はらひきよめ」という日本文化】>> 

 暦の上では正月を新春と呼びますが、自然界が本当に春らしい陽気
カテゴリ:玄学の基本 続きを読む>>
 
#0059 2010.10.8
人類の祖先は本当に猿類か?
「神(かむ)伊邪那岐・伊邪那美の命(みこと)妹背二柱(いもせふたはしら)嫁継(とつ)ぎ給ひて、国の八十(やそ)国、島の八十島を生み給ひ、八百万の神等(かみたち)を生み給ひて、麻奈弟子(まなおとこ)に火結神(ほむすびのかみ)を生み給ひて」『鎮火祭祝詞』

 これは太古の鎮火祭(ちんかさい)の祝詞(のりと)の一部ですが、「麻奈弟子」とは古言で「末
カテゴリ:日本の神伝 続きを読む>>
 


 
 
 
 (google
     新規会員登録
 
カードでのお申し込み
銀行振込でのお申し込み
 
◎特定商取引に基づく表記
◎プライバシーポリシー
SSLページは通信が暗号化され
プライバシーが守られています。

携帯サイトはこちらから
 お知らせ
 
◎会員様へのご案内メールについて
  

◎携帯サイトURLはこちら
  

◎Q&Aについて
  

◎今後の掲載予定
  

  Q&A(会員様のみ)
 
質問をする(会員様のみ)
今までの質問へのお答え
◎同性婚について
◎大祓詞について
◎滝行について
◎産土神について
◎日本古学を深く学ぶために
◎宮中で女性がお仕えするわけ他
◎天孫降臨の地
◎「道を得る」を登山に例えると
◎「縁」は「産霊の徳」によって編まれる
◎宮地神仙道について
◎日本の国体を護持される高僧
◎社会人としてのマナーを守りましょう
◎「悟り」を日本古学的に考えると
◎それぞれの「道」
◎神仙の道を修するということ
◎真偽の見分け方
◎「仙童」寅吉が念仏仏教を嫌った訳
◎道を得る法
◎少名彦那神が常世国へ渡られた理由
◎ヤマタノオロチと熊野
◎先祖供養について
◎イエス・キリストのこと
◎己の器の大きさを知る
◎魂で感じる
◎ダークエネルギーとダークマター
◎宇宙の意思
◎幽界と顕世は表裏一体
◎神仙得道の法
◎輪廻転生
◎仏縁
◎神火清明 神水清明
◎鏡について(2)
◎鏡について
◎洗米の処理
◎霊症から身を守る方法
◎罪穢れの解除
◎霊性向上とは?
◎大物主神(2)
◎大物主神
◎妖怪とは?
◎天皇を祀る
◎神=エネルギー?
◎はらいきよめ
◎人はなぜ生まれ変わるのか?
◎たましひの響き
◎動物について
◎生命が宿る瞬間
◎オーラ
◎「気」について
◎女性と黄泉国
◎アトランティス文明について
◎太陽と月と地球の関係
◎「心と体のリセット」について
 
 閲覧回数トップ10
『古事記序文』解説(1)
『異境備忘録』の研究(1) -概略-
『幽界物語』の研究(1) -概略-
『古事記序文』解説(4)
扶桑皇典(1) -人智の狭隘-
尸解の玄理(1) -神化の道-
『幽界物語』の研究(16) -幸安の使命-
扶桑皇典(10) -顕幽分界-
君子不死之国考(6) -孔子が憧憬した君子之国-
扶桑皇典(34) -霊人-

 
  カテゴリ
玄学の基本
日本の神伝
世界太古伝実話
『仙境異聞』の研究
神仙の存在について
神道講話
清明伝
神道宇宙観略説
尸解の玄理
『幽界物語』の研究
怪異実話
『異境備忘録』の研究
『本朝神仙記伝』の研究
無病長生法
扶桑皇典
君子不死之国考
神剣之記
日本は神仙往来の要路
東王父・西王母伝
混沌五岳真形図説
 
 以前の記事
2018/11
2018/10
2018/9
2018/8
2018/7
2018/6
2018/5
2018/4
2018/04
2018/3
2018/2
2018/1
2017/12
2017/11
2017/10
2017/9
2017/8
2017/7
2017/6
2017/5
2017/4
2017/3
2017/2
2017/1
2016/12
2016/11
2016/10
2016/9
2016/8
2016/7
2016/6
2016/5
2016/4
2016/3
2016/2
2016/1
2015/12
2015/11
2015/10
2015/9
2015/8
2015/7
2015/06
2015/5
2015/4
2015/3
2015/2
2015/1
2014/12
2014/11
2014/10
2014/9
2014/8
2014/7
2014/6
2014/5
2014/4
2014/3
2014/2
2014/1
2013/12
2013/11
2013/10
2013/9
2013/8
2013/7
2013/6
2013/5
2013/4
2013/3
2013/2
2013/1
2012/12
2012/11
2012/10
2012/9
2012/8
2012/7
2012/6
2012/5
2012/4
2012/3
2012/2
2012/1
2011/12
2011/11
2011/10
2011/9
2011/8
2011/7
2011/6
2011/5
2011/4
2011/3
2011/2
2011/1
2010/12
2010/11
2010/10
2010/9
2010/8
2010/7
2010/6
2010/5
2010/4
2010/3
2010/2
2010/1
2009/12
 
 
 
サイトご利用にあたって プライバシーポリシー 会員規約 お問い合せ
Copyright(C) NIHONKOGAKUACADEMY