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#00795 2022.9.6
天地組織之原理(36) -物質凝固の世期-
 
 
 或る人問ふ、御講述によりて穂之狭別島は国土の長子所謂(いわゆる)兄国なるが故に他の国よりも先に噴起したりと云ふ御説、道理に於て然るべきが故にこれを了解せり。 #0794【天地組織之原理(35) -ノアの方舟・大洪水伝説-】>>
 然るにこの時伊邪那岐・伊邪那美命両神再び天降りて神を生み給へる時には、その穂之狭別島は全く海上に噴起したるものなりや、又は所々の山岳のみまず噴起したる位のことなりや。

 答ふ、この時の穂之狭別島は前々の講述にも論じ置きたる通り今の日本の太古の名なれば吾国のことなるを、この時には未だ現今の国土全く海面に噴起したる事とも思はれず、国土の噴起と云ふも後世の噴火噴水或は地震等の為に一地方一時に陥没して他に又一時にする如き小震動と違ひ、国脚より漸々(ようよう)噴起すべき理(ことわり)なれば、造化の定則たる物質順化の理なるのみに非ず。
 両神この神生みの間も幾多の星霜(せいそう)を経たる事とも知り難き程のことなれば、その久しき間に漸々順化の理を以て噴起し、全く国土の地位定まりしは第三期の始めと窺はるゝ明文もあれば、その所に至りて講ずるを合せて参考あらば自得せらるゝこともあるべければ、まずそれまでは現今の如く小さき島々まで噴起したる程のものにも非ざるならんと想像ありて然るべし。

 或る人又問ふ、第一期前巻の御講述中、参考の為承りし地骨の上塗に土砂のかゝりしは全く海底の組織ならんとの御意見は然ることなるべきが、山岳その他国土の上塗と云ふべき地骨外の土中に締まる為に加はりたる大小の摩擦石の中には、所謂第一期石に属する火造石と云ふべき岩石、又は花崗岩の類も多くありと見ゆれども、その間には又灰石の類も多く加はり、中には焼石の如きもの、半土半石と云ふべきものが加はりたるものと窺はるゝに、それ等の石は金石学にては第二石期後にかゝる水造石と承る。 #0778【天地組織之原理(19) -地球の外部組織-】>>
 然るにこれ等の石この開闢第一期より第二期の始め、吾日本即ち穂之狭別島の噴起の時に早く山岳に加はりたるは如何なる理由なりや。

 答ふ、御尋ねの義は国土の組織に就て必ず注意すべきことなるが故に、一通り意見を述ぶべし。まず地質学金石学の論ずる所にては粗(ほぼ)御説の通りなるものにて、地骨より外部にては大岩石の類、花崗岩の類、所謂火造石と唱ふるもの最も太古凝結したるものなることは疑ひ無きことにて、吾神典にて造化大気運の変遷を推して考ふるも物質凝固の世期は第一期にして、両神国生みの終りより神生みの御神業に至る間の星霜(せいそう)最も凝結甚だしき世期なることは修理固成の神勅の動かざる所にして、その始め柔軟なるものより起こりたる国土もこの間に凝結したるを以て明らかなれば、今日最も堅硬なる石類は多くこの世期のものと窺はるゝを、国土の上塗にかゝりたる土中にある所の水中摩擦の石類には多く水造石と名付くる灰石の類加はりたるは疑ふべきことなれども、石中に小動物を含みたる二期石・三期石の外(ほか)に第一期の凝固石にも灰石に類する石無しと云ふべからず。
 又焼石の如きものあるは地質学の論を以てするも国土創造の際、火気の不平均より然ること無しとも云ふべからず。特に国土噴起の時などは非常に激烈なるべき理なれば、随分錯雑(さくざつ)なる石類相混じたるも奇とするに足らざるべし。

 然れどもこの第一期噴起の国土には決して他動物の石中に入るべきに非ず。この時は未だ無生物界と云ふべき時代のことなれば、生物等を含める石のその間にあらんにはその他は後に変遷ありしものと見るべきものにて、太古の変遷にかゝるものは第三期に至り神典の明文より講述すべければ、その所の説を合せてこれを講究し、地学・金石学の未だ確定せざる石層類の時代をも定むべきは吾神典の講究にあるものなり。
 これ等のことを参考として第三期の講述を俟たるべし。方今の地学と雖(いえど)も到底吾神典によりて国土組織の大原理より講ずるに非ざればその真理は得難かるべし。

 さて国土の組織に就ては地学にも未だ不定の説多き事と聞こゆれば、他日は必ず訂正すべきこと無きにも非ざるべければ、贅言(ぜいげん)ながらこゝに参考ともなるべき一話を加へ置くのであります。
 余(よ)、前年九州地方へ遊びたる時に豊後国日田より彼(か)の有名なる耶馬溪(やばけい)の山水(さんすい)を一見せんと路を耶馬渓に採りしが、「耶馬」と名付くるものは本(もと)「山谷」と唱ふる地にて、嘗て頼山陽(らいさんよう)氏のこの地に遊びたる時、この渓間七、八里程の間山水の峨々(がが)として仙骨を帯びたること絶世の佳境なりと称賛し、山谷の文字をも耶馬と改めたるより頼氏の名と共に本邦無比の山水と云ふに至りたるものにて、実にこの渓間を過ぐれば自ずから仙境に入るの思ひある程奇絶の山水でありますが、その七、八里ばかりの長き間中に一帯の川流ありて、或は山骨を東に眺め、或はこれを西に望み、佇立(ちょりつ)すること幾回なることを知らざる程の風致(ふうち)にて、仙骨とも云ふべき山岳の巖石もあり又突然として山腹より大木の生へたるかと疑はるゝ石もあり。

 中にも殊更に雅地あるものは無数の小石集結して一つの大巖石の如くなりしものにて、その小石は皆水造石の類にて、木を以てこれを打つも必ず砕けんと思はるゝ程の円形なる摩擦石多く集結し、その間にある土は又その石と共に凝結して凸凹となりて、その凹所は尋常の山土の凝結物にして凸所は無数小石の集結なり。申さば常の山岳上塗土に加はりたる小石の最も多きものが山土と共に凝結して岩石の如く成りたるものにて、これを一言に評すれば山の化石と云ふも可ならんと思はるゝ程のことであります。
 尤も太古よりの岩石も又多くありて、その質の同じからざるを以て一層の風致もある事と考へらるゝのでありますが、その無数小石の集合より成れるものにもその凝固の堅軟ありて、中には山土の半ば化石とならんとするものある程のことなれば、必ず太古の凝固石に非ざることはよく知らるゝことであります。

 これ等のことを参考として太古第一期物質凝固世期のことを考ふれば、造化の気運は修理固成の神勅の如く第一世期最も凝固の盛んなるものにて、地骨の如き大凝固物の成るに随ひ順次凝固の気、相減じたるより、後期に及ぶに随ひ石質の堅硬を滅したるものと想像せらるゝのであります。
 然れども今日にても多く星霜を経る間には漸々凝結の気は増すものと思はるゝのでありますが、これ等のことは格別必要の無きことなれども、多少参考となるべきものなるが故にこゝに一言加へ置く次第であります。
 
 
 
清風道人
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