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#00717 2021.5.26
真誥(1) -敬神の道-
 
 
(清風道人云、この『真誥(しんこう)』は明治六年、大阪で開催された宮地厳夫先生(宮内省式部掌典として明治天皇の側近を務められ、また宮地水位先生の仙去後に神仙道の道統と学系を紹統された)の神道講義に感銘を受け、一念発起して修真の道を志した河野至道寿人がその事の顛末を自記されたものです。 #0456【『本朝神仙記伝』の研究(74) -河野至道寿人-】>> #0636【水位先生と方全先生(1) -方全霊寿真-】>> #0637【水位先生と方全先生(2) -顕幽に亘交遊-】>> #0638【水位先生と方全先生(3) -方全先生の使命-】>> )

 御講義聴聞(ちょうもん)し、退(ひ)きてその私を省みれば則ち危殆(きたい)にして安からず。飲食を貪りて肺腸を腐し、色に淫してその精を減らし、或は家財を貪り思ひを集めて以てその神を悩ます。然るに性命之正に原(もとづ)く事を知りて敬神又明なり。
 その明なるは明治六癸酉(みずのとのとり)仲秋、浪花御開講の節より御講義聴聞する度々、皆心根に徹せざるはなし。依りて敬神の道には暫時(ざんじ)も離れ難く、神精の耳を以て聴聞するに又悉(ことごと)く明なり。

 これを以てその前の耳を省みるに、聴いて聞こえぬのみならず、食してその味も知らず、又その味を聊(いささ)かこの節知覚するも皆御講義聴聞の徳にて、幽の鏡に現の移るが如し。その知覚したる本源の修行には、色情に離れ、諸々の奢(おご)りに離れ、鳥獣の肉を絶ち、卵を絶ち、魚類貝類すべて羶腥(なまぐさ)を絶ち、五穀八穀すべて穀物を絶ち、酒、酢、醤油、野菜、菓子類何れもこれを生涯の絶物として、吾敬神を一天に貫かせ給へと、皇大御神(すめおおみかみ)又産土神、天満宮その外(ほか)八百万神等へ誓を掛けて山に入る。

 この山、泉州犬鳴山と云ふ。実に清浄の霊山、滝数凡そ十四、五あり、この中の大滝に打たれて十七日素肌を極寒の雪水に浸し、その後同山より東へ分け入り、中津川と云ふ高丘を越して紀州粉川へ出で、高野山或はタテリ山等を廻りて神社は素より寺にも宿り、その道を問ふて立ち戻り、御講義聴聞して性命の正に彌原(いやもとづ)き、又紀州堅田神社、玉津島神社、東照神社を拝し、和歌浦等を見物、伊太祁曽(いたきそ)神社並びに日前(ひのくま)宮、国懸(くにかかす)宮の大御神を拝して、泉州一の高山・葛城へ十七日山籠、不思議の神慮を蒙り、和州奥吉野石室に入りて神精を練り、その後立ち帰りて又当子の一月、犬鳴山滝にて十七日水行の上、紀州龍門へ山籠、こゝに仙ヶ窟と云ふ岩窟あり。蝮蛇多く登る人なしと聞く。

 然るに窟(いわや)にて一夜明かすと雖(いえど)も蝮蛇に逢はず。尤も泉州中津川谷合にて小さき蝮蛇を見る。又、奥吉野、熊野路、伊勢路境も不遠と思ふ処にては、大なる蝮蛇その外これまで画にも見ぬ種々の禽獣を見ると雖も敬神の徳によってすべて禍ひなし。
 それより又葛城山へ籠り敬神の道を修する苦しみ、苦しき中に又楽しみあり。雨露に湿る衣服の乾く間を待てば忽(たちま)ち織紝(しょくじん)業の始めを知りて保食神(うけもちのかみ)を拝し、又足の助けの草履を見て宇賀の御魂稲女神(みたまいなめのかみ)、稚産霊神(わくむすびのかみ)、又保食神、大年神、御年神、命繋ぎの米のみならず草履の藁(わら)まで恵ませ給ふは、実に海山尽し難き御恩なりと土草履ながらも頭上に戴けば、米の味まで食せずして自ずから知る。

 これも皆御講義聴聞の徳なりと益々ありがたく敬神の道を修し山を下りんとするに、真下は佐野、鶴原、岸和田、貝塚、脇の浜、南は紀州、北に浪花、向ふは堅田、淡路、兵庫、神戸も微(かす)かに見えて、見ゆる処に予(よ)が帰る家もあり、又その家の御恩を知りて屋船神、久々乃遅神(くくのちのかみ)、豊宇気姫神を拝し、家に煙の立つるを見れば火結神(ほむすびのかみ)、奥津日子神、奥津日咩神の御恩と拝し、迷はんとする路を迷はぬは道反(ちがえし)の大神、衝立船戸神、猿田彦大神の御恩と拝し、遠き青野近き山の茂りしを見れば皆この木草にて、海を渡るは船、川を渉るは橋、車に乗るも人の病の薬となるも皆この木草なりと木草の神の御恩を知りて、屋船神、五十猛神(いそたけるのかみ)、大屋津姫命、抓津姫命(つまつひめのみこと)を拝し、麓へ下り郷(さと)へ出で、農家に入り井水を乞ひて水波能売神(みずはのめのかみ)、御井神、雷神の恩と拝し、野を越え山を越し、近寄る海を見渡せば、海にも又人を養ふの魚の数々海草多きも皆、神の御恩なり。

 それのみならず浪も静けき蒼海の色に見ゆる御国の太平、吾等迄も安穏(あんのん)に暮らすはこれも御守護の神あり、宇佐、厳島、八幡大神、田心姫命、市杵島姫命、湍津姫命、建御雷神、大国主大神、事代主神、級長戸辺命、級長津彦命、底筒男・中筒男・上筒男命の神々を拝し奉りて帰宅するに、長き野宿の疲れもなく無病となり不老不死の兆(きざし)を知るは、手足の爪替り身体の皮肉を替え、髪に多き白髪も黒毛に戻り、赤き月代(さかやき)は青く栄え塞がり、眼の玉を替え、音声の濁りも澄み切って替る。これ等は眼前の神恵なり。

 予は元、髪は過半の白髪、月代赤く、多病にして月に一度風邪の悩みあり。これを知る人ならではこの神恵を知らず、尤も親族の人々は予が姿の替り若やぐを見て、三度の食を絶ちながら無病となり若やぎ返るはこれ全く神の御守護に疑ひなし、これを以て考えればこれ迄有るか無きかと思ひし神も有るは眼前と、忽ち悪も善に翻(ひるがえ)り、酒・色を慎み、諸々の貪りを慎み、或は朝飯を絶ち、その価を以て陰徳を施し、或は放生(ほうじょう)をなすもあり、依りて貧なるも絶以て両三年にて富み転ずるもあり。

 これも元は御講義聴聞の徳なり。血縁廻縁の者も今は皆御講義聴聞懈怠(けたい)なく出席、依りて我身のみならず双方神慮を蒙るに付、寸歩の間も敬神忘れ難し。この道を修する徳によって益々壮健となり、以前は日に十里の路にも疲れ、今は二十里を踏むとも覚えず。この無病壮なるは全く大名持命、少名彦命の神恵を蒙る故なりとこの二大神の神拝日夜怠ることなし。
 又視んとするものは既に見え、聴く事は聞こえ、思ふ処へ手も届き、行く所へ足も通ふは則ち天照皇大御神また産土神の神恵を蒙る故なりと慎み敬ひ拝し奉り、その外神恩深き神々へもこの二柱の大神を日夜朝暮神拝怠りなくば皆貫通すべし。 #0195【神道講話(2) -敬神のこと-】>>
 
 
 
清風道人
カテゴリ:真誥
 

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