日本古学アカデミー

#00785 2022.7.8
天地組織之原理(26) -母なる大地-

 


 或る人問ふ、大八洲(おおやしま)の元種、たとへ胞(えな)となし置き給へる淤能碁呂島の養ひあると雖(いえど)も、万国と云ふべき程の大なるに至りしと云ふ道理は如何。 #0784【天地組織之原理(25) -国土の元種-】>>

 答ふ、この御質疑に就ては、まず造化の定則より講究すべし。総て造化の定則は今も眼前に備はりたるものにして、小なるものゝ大なるに及ぶは天地間万物の上に動かすべからざる真理にて、この太古の時代より備はりたるものなり。

 如何となれば、今こゝに数百年を経たる一本の松樹ありと仮定せよ。その樹の大なること周囲は数丈余、その高きこと数丈、その幹は龍鱗(りゅうりん)の如く、その枝は四方に繁茂しその根は数歩の外に蟠(わだかま)る。
 もし蟻の如き小虫をしてその幹に登らしめば、樹上に達するまでの程路は人の他国に行くの思ひあるべし。その龍鱗の間に入れば、深谷に至りし思ひあるべし。かくの如き大なる松樹に向ひては、蟻はこれを国土なりとも思ふならん。然れどもその大なる松樹の生まれたる始めは芥子(けし)の如き小さきものなりと云ふとも、蟻は必ずこれを疑ふならん。

 然るに人をしてその大なる松樹は、元芥子の如き小さき松種より成りしと云ふも誰か疑ふ者あらんや。これ小よりして大に及ぶ造化の定則を知るが故なり。国土と松樹とは異なりと雖(いえど)も、小よりして大に及ぶの真理に於ては更に異なるものに非ざるなり。
 然れども人、松樹を疑はざるは、目前に多く見る所の習慣よりこれを奇とせず玄妙と思はざるのみ。よくその然る所以(ゆえん)を講究せんと欲すれば、国土の元種小よりして大八洲と成りしと何ぞ異なるの理(ことわり)あらん。然るに一つは信じて一つは疑ふ如きは小眼も又憐れむべきものにて、松樹に対する蟻の思想と何ぞ異ならんや。

 或る人又問ふ、御説明によりて小より大に及ぶは造化の定則なりとの真理は了解せり。然るにこの国土生産の時には未だ地球は縦位なりしものなりとの御説なり。然るに淤能碁呂島に生み給ひし元種一度海底に沈んで漸々(ようよう)大なる国土と成りしは然る事とするも、太陽直下より海底に入りし国土の再び八方へ噴起し、今の如く万国の位置を成すに至りしは如何なる理由なりや。 #0776【天地組織之原理(17) -地球の縦横-】>>

 答ふ、御質疑によりて聊(いささ)か意見を弁明すべし。前に講述したる通り大八洲とも一度海底に沈みて、地球内部中心の大地骨たる淤能碁呂島の養ひによりてその大地骨より凝結の性を伝へ、終に泥海中の泥土集合して枝骨の如く成りしは今の国土の骨格皆岩石にても知らるゝことなるが、その海底にて組織中は国脚たるものは何れも長大なるべき理なれども、未だ全く凝固したるまでにも至らぬ道理なれば流動物にして、後第三期に至り海水を減じて月球を成就し給ひしにより、万国共に海上に現出するに至るまでの間には造化の神量(かむはかり)を以てその位置の宜しきを計り、自ずから班列成さしめ給へる事と窺はるゝなり。
 かくの如く申すは只想像に出るものゝ如くなれども、今日眼前に見る所の国土が全く海中にありて地骨の上に泥砂を以て上塗かけたるものならんと云ふことは、前にも参考までに粗(ほぼ)弁じ置きたる通りなれば、併せて講究あらば思ひ半ばに過ぐる所あるべし。

 或る人又問ふ、国土の元種たとへ柔軟なる小さきものとするも、両神の神体より国土その物が生まるゝと云ふは理に疑ひ無き能(あた)はず。その理のある所を今一応承りたし。

 答ふ、両神国生みのことは他学者は勿論、吾同学者の中に於ても疑点百出、終に国魂神(くにたまのかみ)を生み給へるにて国土その物を生み給へるには非ずと論ずるに至る。然れども前に講述したる通り記紀両伝共に明文の動かすべからざるものあるのみに非ず、この両神は地球造化の太祖に坐して、他の諸神と違ひ万物の元種は皆この両神に起こりしものなれば、国土の元種は素より万物の元種を生み給ふも何の疑ふべきことかあらん。

 今万物皆合歓(ねむ)の道よりして繁殖するは、この両神の合歓の道より起こりて万世の今日に貫くものなり。故に万物が大地の上にありて合歓するは、大地に合歓の先性を備ふるに非ざれば行ひ難き故に、殊に国土の先種も合歓の間に起こし給へる御神量と窺はるゝなり。
 申さば今日の万物は動物・植物の別無く直ちに大地より産出すと云ふべき程の道理なれば、万物の上に於ては大地は今日の伊邪那岐・伊邪那美命とも申すべき理あり。人にありては合歓の道はその欲する所に随ひ、四季の気候・大地の気性関せざるものゝ如くなれども、到底人間の固有性ばかりでは行はれざるものにて、必ず大地に備はりたる合歓の気性が半ばはこれを助けて行はしむるものならんと思はるゝなり。

 如何となれば、禽獣に至りては四季の気候・大地の気性によりこれを行ふを助けざれば合歓の道行はれざる程のものにて、草木の如きに至りては全く四季の気候・国土の気性よりその道を伝ふるに非ざれば行ひ難きことは、目今の現象に考証ありて窺ひ知らるゝものなり。
 故に地上の万物を合歓の道より起こし給はんには、その元となる大地所謂(いわゆる)国土なるものに合歓の原性を備へ置き給はざるを得ざるは造化真理の然らしむる所にて、国土その物の元種を地球造化の第一者手として合歓の道より起こし給へるなり。それが為に国土その物に男性・女性の別さへあるの神伝なるは妙なる真理あるに非ずや。

清風道人

カテゴリ:天地組織之原理
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