#00565 2018.11.24
混沌五岳真形図説(13) -有道の士これを受持す-
「得之不正者招患害呼殃夭此道有信与不信而所禍福之関不可軽也(コレヲ得ルモ正シカラザル者ハ患害ヲ招キ殃夭(おうよう)ヲ招カム。コノ道、信ト不信トニ有リ。禍福ノ関ハル所、軽ンズベカザルナリ。)」
『抱朴子(ほうぼくし)』に「古人僊官至人、コノ道ヲ尊秘シ僊名有ル者ニ非ザレバ授クベカラザルナリ」とある如く、五岳真形図の授受は本来は霊信之位に至れる者がその璽信として受持を許された程で、かく尊貴にして神異なる真図であればあるだけに、これを受持する心構へといふものが大切とされるのは当然のことであります。
「コノ道、信ト不信トニ有リ」とはいみじき達言でありまして、軽信の徒(ともがら)の前に神秘を語ることの容易ならざるを戒めているのでありますが、葛仙翁も「神仙ノコト、誠ニ小醜ノ縁尋(えんじん)スベキ所ニ非ズ」と断ぜられております。 #0223【尸解の玄理(2) -神通は信と不信にあり-】>>
仙縁有るに似たりと目せられる人士も、その所信の変化如何(いかん)によりては、仙を得べき道書を変じて禍を致すの書たらしめ、仙胎を養ふの尊図をして身を傷(やぶ)るの刀鋸(とうきょ)たらしめるのでありますから、頭上神明の幽鑑を怖れ慎み、常に眼を天際に著(つ)けねばならぬのであります。 #0375【『異境備忘録』の研究(60) -神仙道の心得-】>>
特に五岳真形図の尊きに至りては、もとこれ三天太上大道君親写して制し給ひし混沌元始の真形で、元気初めて発動して五気の精を固め、五神その徳を化行して開闢せし五大神界に霊気を結ぶところの神物でありますから、前章にも引けるが如く、家にこの真図あれば五岳の神界より一岳各々五神を遣はし、この二十五神、その地の山川の霊官と共にこの真図を祭る家を守護し、またこの図を奉持して山林河海を径行せば、その行く所の霊境の主神は皆出でゝこの図を拝迎すと伝へられ、鬼神すら尚かく卑降の礼を執るの神物でありますから、況(いわん)や人間の士として軽信あるべからざることは言を俟たざるところであります。 #0564【五岳真形図説(12) -五岳真形図の神異-】>>
只今かく五岳神界の説を聞くことすら容易ならざる勝縁の致すところで、それは『雲笈七籤』の五岳真形図施用法に「昔、中黄太一(ちゅうこうたいいつ)ヲ遣ハシテ、コノ図ヲ以テ下シテ名山隠逸ノ仙録有ル者ニ授ク。結約四十年ニシテ伝フルナリ。自ズカラ運命ノ偶ニアラズンバ、ソノ篇目ヲスラ見ルコト無シ」とある如く、その人の仙縁といふものが熟して、自然にそうした運命に遭遇しなければ真形図の説をさへ聞くことも出来ないもので、況や伝授の機縁に触れるといふ様なことはよくよくの道縁の致すところであります。
さて、(宮地)水位先生の霊宝混沌五岳真形図開巻序文の文末には、「明治龍当旋蒙協洽月宿大簇天禽日大宥道人水位宮地堅磐謹序(明治ノ龍ハ旋蒙(せんもう)協洽(きょうこう)ニ当タリ、月ハ大簇(たいそう)ニ宿ル天禽(てんきん)ノ日、大宥(たいゆう)道人、水位宮地謹ミテ序ス)」と認(したた)められてあります。
「龍」は辰即ち辰宿(しんしゅく)、「旋蒙」は十干の乙(きのと)の異名、「協洽」は十二支の未(ひつじ)の異名、即ち明治乙未の年にて明治二十八年、「月ハ大簇ニ宿ル」は正月、「天禽」はまた天符とも云ひ瑞祥を下すの星と云はれ、奇門遁甲の壬儀に付属する天の九星の一、この天禽の日を以て符録を記せば霊なりと為すこと玄家の常とするところで、即ちこの序を認められしは明治二十八年一月十五日、時に水位先生御四十三歳に当たるの年と思はれます。
「大宥道人」は水位先生の別号で、特に神秘な道書の御記には多くこの道号を用いられているのであります。尚、この道号の由縁に就て大いに申し述べたいことも御座いますが、本題外のことに属しますので何れ他日を期したいと存じます。
(清風道人云、水位先生によって齎された五岳真形図は混沌五岳真形図の外にも種々の真図が存しておりますが、それ等につきましては機会があれば講究致したいと存じます。)