日本古学アカデミー

#0002 2009.12.25
森羅万象を説く「五元」の説

 


 人類は古来より、目の前にある自然界の事実や、あるいは宇宙間に存在するすべてのものごとを研究し、説明を試みてきましたが、各国々によってその表現方法は異なります。現在の物理学では、水素・酸素・炭素・窒素を四大元素とし、それからさらに細密に分析すれば、百数十の元素に分類されます。そして、この元素に「エネルギー」という概念を加えてあらゆる現象を説明しています。

 これに対して古代日本人は、「五元(ごげん)」という概念で森羅万象を説いてきました。日本では風・火・土・金・水の五元といいますが(あるいは風・木・火・土・金・水の六元)、中国では木・火・土・金・水で「五行」といいます。これは日本の五元のうちの風の代わりに木が加わっていますが、他の火・土・金・水は同じです。インドでは風・火・地・水・空の「五大」であると説かれ、通常はその中の空を省いて「四大」といわれています。これも日本の五元のうちの金を除いて、代わりに空が加わっているだけが違いです。また古代ギリシアでは、アルケー(万物の根源)は風・火・土・水の四大元素から成っているとされましたが、これも基本的な概念は同じです。
 この五元の中で、風と火は無形に属するものであり、物理学でいう元素の中には含まれていません。元素は有形に属するものであり、五元のうちの土・金・水に含まれています。つまり有形に属する土・金・水という質の三種に、無形に属する風・火という気の二種を加えて、五元とか五行とか五大といっているのです。

 この五元の説によると、人間は風・火・土・金・水の五元が集合して成(で)きているものとされています。まず、生きている間この肉体が暖かいのは、霊魂(たましい)の火の温もりの徳(はたらき)によるものです。また生きている間は呼吸(いき)をしていますが、この呼吸は風の徳によるものです。また人間が死んで霊魂が去った後、肉体は冷たくなり、血液やリンパ液などの流動物は水となり、筋肉や臓器などの固形物は分解されて土に還ります。つまり人間が生きている間の事実は、土と水から成る肉体に風と火の霊魂が宿り、そして金に属する骨で締め固めて活動しているということになります。

 自然界のあらゆるものが往復循環していることは前に述べましたが、世の中に存在する有形物はすべて限りあるものであり、一定の期間以上はそのままの状態を保つことができないしくみになっています。 #0001【往復循環の法則という自然の摂理】>> そこで人間も、ただ活動して補うことをしなければ命を保つことができませんので、昼夜に補う行為をしています。まず夜になると肉体を横たえて睡眠をとりますが、これは霊魂を補っています。また昼は起きて活動し、その間に飲食をしますが、これは肉体を補う行為です。しかもその飲食物をよく見てみると、知らず知らずのうちに風・火・土・金・水の五元を補給していることがわかります。

 食物は米を始め、野菜や穀物など、すべて土より生じるもので、これらを食べることによって肉体の土を補っています。しかも食する際には火で焼いたり煮たりしますが、これは体内の火を補うためです。また火は風によって燃えますので、焼いたり煮たりした食物には自然に風の気も含まれており、体内の風も補っています。さらに焼いたり煮たりするときに用いる鍋やフライパンの多くは金属ですので、焼いたり煮たりした食物には金気も含まれており、その金気によって体内の金を補っています。
 たとえば日本人の主食であるご飯は、まず米を釜に入れて水に浸し、それを炊くことによってできあがりますが、このご飯を食べると、土より生じた米は体内の土を補い、浸した水は体内の水を補い、炊き込んだ火は体内の風と火を補い、釜の金気は体内の金を補っています。つまり、人間は飲食をすることによって、体内の風・火・土・金・水を補っているといえます。しかしこの風・火・土・金・水のうち、どれかが欠けたり不純なものを摂取すると、心身の調和が乱れてバランスを崩し、人間は疲れたり病気になってしまいます(そういう意味では病気というものは五元の気の病といえるかもしれません)。環境破壊により汚染された水や、農薬漬けの野菜や果物、病気にかかった牛や鳥などの肉を食することは、人間の心身に悪影響を及ぼす危険な行為といえるでしょう。

清風道人

カテゴリ:玄学の基本
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