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#0086 2011.2.16
ヤマタノオロチの伝承(1)
 
 
「かれ、避追(やら)はへて、出雲国の肥の河上に在る鳥髪(とりかみ)の地(ところ)に降りましき。この時、箸(はし)その河より流れ下りき。ここに須佐之男命、その河上に人有りけりと以為(おも)ほして、尋ね覓(ま)ぎ上り往きまししかば、老夫(おきな)と老女(おみな)と二人在りて、童女(おとめ)を中に置きて泣くなり。ここに「汝等(いましたち)は誰ぞ」と問ひたまへば、その老夫(おきな)答へて言(まお)す。「僕(あ)は国神(くにつかみ)、大山津見神(おおやまつみのかみ)の子なり。僕(あ)が名は足名椎(あしなづち)、妻(め)が名は手名椎(てなづち)、女(むすめ)が名は櫛名田比売(くしなだひめ)と謂(まお)す。」また、「汝(いまし)が哭(な)く由(ゆえ)は何ぞ」と問ひたまへば、「我(あ)が女(むすめ)は本(もと)より八稚女(やおとめ)在りしを、ここに高志(こし)の八俣遠呂智(やまたのおろち)、年毎(としごと)に来て喫(くら)へり。今それ来ぬべき時なるが故に泣く」と答へ白(まお)しき。」『古事記』

 再び高天原から地球に派遣され、将来の人類世界を構築するための神業を終えた須佐之男命は、出雲の鳥髪という地に降りました。 #0084【五十猛神の功業】>> #0085【地球環境完成への道】>> (次の「箸(はし)その河より流れ下りき」とありますが、この時代にはまだ火食の道が伝えられていないため、この「箸」が何を示しているかは不明ですが、当時地球に存在した国津神が使用した何らかの道具であろうと思われます。)

 大山津見神(おおやまつみのかみ)は、神代第二期において伊邪那岐神によって斬り殺された火神(ひのかみ)迦具土神(かぐつちのかみ)の神体より成り出でた神で、化生神ですので当然天津神(あまつかみ)です。その子である足名椎(あしなづち)が、天津神ではなく国津神(くにつかみ)となっていますが、これは大山津見神の配偶の神が国津神であり、足名椎はその配偶神より生まれた胎生神と考えられます。(たとえ父神が化生神でも、母神が胎生神で、その合歓(ねむ)の道によって地球で生まれた胎生神が国津神であることがわかります。) #0049【化生神と胎生神】>> #0052【火神の剣尸解(1)】>> #0055【神々の分体と合体】>> 
 その足名椎、手名椎の八稚女(八柱の娘)の内、櫛名田比売(くしなだひめ)以外の七柱の娘を毎年のように奪っていった高志(これは地名)の八俣遠呂智とは荒ぶる妖魔のようなイメージがありますが、このヤマタノオロチとは一体どのような生物でしょうか?

 平田篤胤先生の門下で、幕末・明治維新期の国学者である大国隆正(おおくにたかまさ)先生によれば、このヤマタノオロチの名義は「八俣(やまた)の落り血」で、火神が伊邪那岐神に斬られた時、御刀(みはかし)の手上(たがみ)に集まれる血が、手俣(たなまた)より漏(く)きて成りませる闇淤加美神(くらおかみのかみ)の変体であるとされています。 #0053【火神の剣尸解(2)】>> 
 手の指の俣は四つあり、両手を合わせて合計八俣から血が漏れ落ちたことになりますが、ヤマタノオロチの姿が八頭八尾であるのもこれに起因するものと考えられ、後に須佐之男命によって斬られた時に血となって流れたことも符節を合しています。

 また平田先生によれば、この神は龍の祖神であり(龍神のことを「淤加美神(おかみのかみ)」また「龗神(おかみのかみ、ろうしん)」とも呼びます)、火神の変化無量の徳を受け継いでいるため、龍と呼ばれる生物は、ある時は大蛇となり、ある時は子蛇となり、ある時は顕界に姿を現し、ある時は幽界に入るなどの伝承があります。ならば、このヤマタノオロチが八山八谷に亘る強大な龍蛇(りゅうだ)の姿であったとしても、決して不思議なことではありません。 #0023【この世界だけがすべてではない】>> #0025【密接に関わりあう顕と幽】>> #0054【火神の変化無量の霊徳】>>
 
 
 
清風道人
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