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#00820 2023.2.03
天地組織之原理(61) -大主権委任の神勅-
 
 
「この時伊邪那岐命、大(いた)く歓喜(よろこ)ばして詔(の)りたまはく、吾(あれ)は子(みこ)を生み生みて、生みの終(はて)に三(みはしら)の貴子(うづのみこ)を得たりと詔りたまひ、即ちその御頸珠(みくびたま)の玉の緒をもゆらに取りゆらかして、天照大御神に賜ひて詔りたまはく、汝命(いましみこと)は高天原を知らせと事依(ことよさ)して賜ひき。故(かれ)、その御頸珠の名(みな)を御倉板拳神(みくらたなのかみ)と謂(まお)す。次に建速須佐之男命に詔り給はく、汝命は海原を知らせと事依したまひき。」

 この明文の「この時伊邪那岐命云々」より「三の貴子を得たりと詔りたまひ」と云ふまでは別に語解を加へずともよく聞こえたる通りにて、「三の貴子」は前に弁じたる通り「二の貴子」とあるべきなり。 #0819【天地組織之原理(60) -日月の大神の出顕-】>>
 次に「即ちその御頸珠の玉の緒をもゆらに取りゆらかして、天照大御神に賜ひて詔りたまはく」とあるも聞こえたる通り、御父・伊邪那岐大神の御頸に付け給へる珠の玉の緒を大御手に取り給ひ、ゆらかし給ひて天照大御神に賜りて詔り給ひしと云ふ伝へなり。
 次に「汝命は高天原を知らせと事依して賜ひき」とあるは、天照大御神に太陽高天原の主宰となりて造化の神業を掌り給へと詔り給ひしにて、吾太陽系中の大主権を御委任遊ばされたるなり。末の「賜ひき」とあるは、その御頸珠は太陽日球の大主権を御委任遊ばさるゝ御璽(みしるし)として授け給ふことなり。

 次に「故、その御頸珠の名を御倉板拳神と謂す」とあるは本居先哲の説に、御父大神より賜りしその御璽の珠を天照大御神の知食(しろしめ)す高天原の御倉に納め、その御倉の内に神棚を掲げて斎(いつ)き祭り給ふよりの御名の如く云はれたれども、この御倉の「倉」の字は仮字にて「御座(みくら)」と云ふ事と余(よ)は考ふるなり。
 如何となれば、この御頸珠は御父大神の御魂の添ひ給ふ御魂代(みたましろ)なれば、天照大御神の高天原を知食す高御座の内に高く棚を掲げて斎き祭り給ふと聞こゆればなり。これぞ天照大御神の御孝道にして天壌無窮御祖(みおや)の神璽を同じ高御座に斎き給ふにて、後に皇孫命(すめみまのみこと)降臨の時にもこの御大礼を以て皇孫命に三種の神器を授け給ひ、同殿内に斎き祭れと教へ給へる事と窺ひ奉らるれば、「御倉」は「蔵」のことに非ず、「高御座」の「座」と云ふを仮字に「倉」と用ひたるものなること疑ひ無かるべし。
 実に「孝」は百行の本(もと)とも云ひ、道義の本元こゝに起こるものにて、吾国上古より祖先を神と祭るもこの御大礼に法るものなり。 #0526【扶桑皇典(56) -先祖祭-】>>

 かくの如く天照大御神はその御祖を祭り給ひ報本反始を以て道とし、政(まつりごと)を以て八百万神を統括し、造化の神業を掌り給ふ。これ「祭」と「政」と並び行はるゝ所以(ゆえん)にして、万世動かすべからざる実訓なり。
 故に吾国民たるものは謹んでこの大道を履行すべきは勿論、独り日本人のみならず天地の間に住する者は悉(ことごと)くこの御教規を奉戴(ほうたい)すべきものなれば、早晩この大孝を万国共に履行せしむべきなり。 #0515【扶桑皇典(45) -国民の要務-】>>

 さてこの次に『古事記』の明文には「月読神に詔り給はく、汝命は夜の食国(おすくに)を知らせと事依し給ひき」とあれども、これは前に弁じたる通り月読命は須佐之男命と御同神なれば略したるなり。
 『日本書紀』に「月読命は滄(あお)海原潮の八重(やおえ)を治らすべし」とあるこそ正伝にして、則ち『古事記』に「建速須佐之男命に詔り給はく、汝命は海原を知らせと事依したまひき」とある伝と同じ伝にて、この詔(みことのり)は須佐之男命にこの地球の主宰となりて地球造化の神業を掌り給へとの御神勅なれども、この時は前にも数々論じ置きたる通り未だ地球は漸く穂之狭別島則ち吾日本のみ海面に噴起したる外(ほか)は皆海底にありて組織中にかゝるものなるが故に、地球は一面の海原なればかく詔り給ふべき理(ことわり)にて、この神勅を以ても余が一家説の通り、この時には未だ万国は海底にありて一面の海原なりしこと知るに足るべし、明文によく心を付くべし。 #0794【天地組織之原理(35) -ノアの方舟・大洪水伝説-】>>

 然るをこの時万国共に海面に噴起してありしものなれば「海原」と詔り給ふべきに非ず、必ず「大地」とか「国土」とか詔り給ふ理ならずや。よく太古の神伝・神勅に心を止めて講究あるべし。
 この時は未だ穂之狭別島より外の国々は海面に噴起せざるを以て、この国より地球一体を云ふ時は「滄海原潮の八重」と云ふより外は無きことなるは、明文と道理とに訴へて動かすべからざる説に非ずや、深く神伝の蘊奥を味ふべし。

 これ則ち須佐之男命に地球造化の大主権を任じ給ふ伝へにして、天地共に造化分担の神祇に君位と臣位の大義を定め給ふ神伝なり。これを以て君臣の大義を重んずべきを窺ひ知るべし。
 さてこれまでの神伝を神代第二期とし、この次の伝より更に第三期と造化の気運一変するが故に、この間の長きこと幾千年と云ふべき程のことなるは、この次に直ちに須佐之男命の「八拳須(やつかひげ)心前(むなさき)に至るまで云々」と伝へたる明文にてその間の長きを窺ふに足るべし。

 さてこゝに聊か講究すべきことあり。それはこの第二期の始め三十二神の錯簡(さっかん)中に十六神の枝系の神坐すなり。この枝系の神も皆奇成の神なればこの第二期中に入るべき神等(かみたち)なり。 #0796【天地組織之原理(37) -古伝の錯簡-】>>
 その中に山津見神と野椎神の二柱の神、山野によりて持ち別けて成し坐せる天之狭土神(あめのさづちのかみ)、国之狭土神、天之狭霧神(あめのさぎりのかみ)、国之狭霧神、天之闇戸神(あめのくらとのかみ)、国之山戸神、大戸或子神(おおとまとひこのかみ)、大戸或女神(おおとまとひめのかみ)、以上八柱神は伊邪那岐命の御禊祓より前に入るべく、又速秋津比古神と速秋津比売神の両神、海川に持ち別けて成し坐せる沫那芸神(あわなぎのかみ)、沫那美神、頬那芸神(つらなぎのかみ)、頬那美神、天之水分神(あめのみまくりのかみ)、国之水分神、天之久比奢母智神(あめのくひざもちのかみ)、国之久比奢母智神、以上八柱神は御禊祓より後なること明らかにして、この神等は何れも第二期中の気運にかゝる神にて奇成の神と知るべきなり。

 又その御神業も造化分担の御神業にして、海水を蒸発せしめて雨と為し、或は山野に霧霞を成し出で給ふ等は皆この十六神の御神徳にかゝる御神業なれども、この神等の御名の語解より加へて講ずるは到底この大綱略解盡すべき限りに非ざるのみならず、この神等の御上に就ては別に余が一家説と云ふべき程の意見も無ければ両先哲に随ひ講究あるべし。

 さてこれまでの講述にて開闢第二期神祇出顕変化玄妙世期の講述は粗(ほぼ)終りたれども、前々申したる如くこの世期は第三期後の講述と照らして講究するに非ざれば真理のある所を窺ひ難きが故に、この世期に疑点ある者は第三期後の講述に合せて参考あるべし。然る時は玄妙の幽理をも自得せらるゝに至らん。
 尚この巻末に『古事記』神生みの伝、三十二神錯簡の講述を聊か加へ置きければ、両先哲の説と合せて参考とせらるべし。
 
 
 
清風道人
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