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#00810 2022.12.5
天地組織之原理(51) -黄泉国-
 
 
「故(かれ)、斬りたまへる刀(みはかし)の名(みな)は天之尾羽張(あめのおはばり)と謂(まお)す。亦の名は伊都(いつ)之尾羽張と謂す。」

 この御剣は申すまでも無く伊邪那岐命の御物にして、造化奇成の神術にて成りしものなれば、その剣徳の霊妙なるは云ふまでも無きことにて、この御剣の霊(みたま)は高天原に坐して天之尾羽張神と申し、八百万神もその神威の畏(かしこ)きを恐れ給ふ程の霊剣にて、「尾羽張」と云ふは本居先哲の説には御刀の形より云へるにて、「尾」は「鉾」のことにて、その鉾の張り広がりたるよりの名と論じられ、平田先哲は「尾」は「雄」にて雄々しき意、「羽」は「刃」の意なるべしとあり、何れか可ならん。余(よ)は別に考ふる所無し、只その御刀の畏きを云ふのみ。先哲の説を合せて講究あるべし。 #0539【神剣の記(2) -神器の威霊の発動-】>>

「こゝにその妹(いも)伊邪那美命を相(あい)見まく欲(おもほ)して黄泉国(よもつくに)に追ひて往(ゆ)きましき。」

 さてこゝに挙げたる明文はよく聞こえたる通りのことにて、伊邪那岐命は伊邪那美命の地下の幽府・黄泉国に神避(かむさ)り給ひしを、御嘆きのあまり火神を斬り給ひし後、尚も恋慕ひ給ひて終に地下の幽府・黄泉国に御跡を追ひ往き給ひしと云ふ伝へなり。
 これ以下黄泉国に入り給ひし後の伝をも明文を挙げて多少の語解を加へ、その意を講ずるに至ればこの黄泉の一伝にても小冊子一巻のよく盡すべきに非ず。特に黄泉の伝は地下の幽府の伝にて決して窺ひ得難きが故に、本居・平田両先哲も只謹んで本伝明文の儘これを解し置かれたるに過ぎざる程のものなれば、到底人智の解し得べき限りに非ざれども、相共に講究の為その考への及ぶ限りは講究すべきものなれば多少の意見を加へんとするも、明文を挙げて委しく講述するは紙数限りある筆記のよく盡すべき限りに非ざれば、一応本文の明文に就て各自に質問あればその質疑に随ひ余が一家の意見を申し述ぶべし。
 故に本語の語解などは先哲の『古事記伝』『古史伝』両伝に譲り別にこれを加へず。単に『古事記』の明文に随ひ講究の参考ともなるべき御質問あらんことを俟つ。故にまずこゝに黄泉の段(くだり)の明文を朗読すべし。

「こゝに殿の滕戸(さしと)より出で向へし時、伊邪那岐命語りて詔(の)りたまはく、愛しき我(あ)が汝妹(なにも)の命(みこと)、吾(あれ)と汝(いまし)と作りし国、未だ作り竟(お)へず。故(かれ)、還(かえ)るべしと詔りたまひき。こゝに伊邪那美命答白(まお)さく、悔(くや)しきかも、速(と)く来まさずて。吾は黄泉戸喫(よもつへぐい)しつ。然れども愛しき我がなせの命、入り来ませること恐(かしこ)し。故、還らむと欲(おも)ふを、しまらく黄泉神(よもつかみ)と相論(あげつら)はむ。我(あ)をな見給ひそと白しき。
 かく白してその殿の内に還り入りませる間(ほど)、甚(いと)久しくて待ちかねたまひき。故、左の御美豆良(みみづら)に刺せる湯津々間櫛(ゆつゝまくし)の男柱一箇(おはしらひとつ)取りかきて、一つ火燭(とも)して入り見たまひし時、うじたかれころゝきて、頭(みかしら)には大雷(おおいかづち)居(お)り、胸(みむね)には火雷(ほのいかづち)居り、腹(みはら)には黒雷(くろいかづち)居り、陰(みほと)には析雷(さくいかづち)居り、左の手(みて)には若雷(わかいかづち)居り、右の手には土雷(つちいかづち)居り、左の足(みあし)には鳴雷(なるいかづち)居り、右の足には伏雷(ふすいかづち)居り、併(あわ)せて八(やくさ)の雷神(いかづちのかみ)成り居りき。
 こゝに伊邪那岐命畏(かしこ)みて逃げ還ります時、その妹伊邪那美命、吾に辱(はじ)見せつと言ひて、即ち泉津醜女(よもつしこめ)を遣はして追はしめたまひき。こゝに伊邪那岐命、黒御縵(くろみかづら)を取りて投げ棄(う)てたまひき、乃(すなわ)ち蒲子(えびかづらのみこ)生(な)りき。これを摭(ひり)ひ食(は)む間に逃げ行(いで)ましき。猶追ひければ亦その右の御美豆良(みみづら)に刺せる湯津々間櫛(ゆつつまぐし)を引きかけて投げ棄てたまひき、乃ち笋(たかむな)生りき。これを抜き食む間に逃げ行ましき。且(また)後にはその八(やくさ)の雷神(いかづちのかみ)に千五百(ちいほ)の黄泉軍(よもついくさ)を副へて追はしめたまひき。
 こゝに佩(は)かせる十拳剣(とつかのつるぎ)を抜きて、後手(しりへて)に布(ふ)きつゝ逃げ来ませる。猶追ひて黄泉比良坂(よもつひらさか)の坂本に至りし時に、その坂本なる桃子(もものみ)三箇(みつ)を取りて待ち撃ちたまひしかば悉(ことごと)に逃げ返りき。こゝに伊邪那岐命桃子に告(の)たまはく、汝吾を助けしが如く、葦原中国(あしはらのなかつくに)に所有(あらゆる)うつしき青人草の、苦しき瀬に落ちて患惚(くるし)む時に助けてよと告りたまひて、意富加牟豆美命(おほかむづみのみこと)といふ名(みな)をたまひき。」

 こゝに挙げたる『古事記』本文の表は別に語解を加へとも一通りはよく聞こえたることなれば、語解の外(ほか)講究の目的とすべき所を御質問ありたし。
 
 
 
清風道人
カテゴリ:天地組織之原理
 

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