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#00805 2022.11.5
天地組織之原理(46) -和久産霊神の出顕-
 
 
『日本書紀』曰く、「軻遇突智神(かぐつちのかみ)、埴山姫神(はにやまひめのかみ)に娶(みあ)ひまして稚産霊神(わくむすびのかみ)を生みたまひき」。
『古事記』曰く、「この神の子(みこ)、魂(みたま)、豊宇気毘売神(とようけびめのかみ)と謂(まお)す」。

 こゝに記紀の明文を合せて挙げたる所以(ゆえん)は、『古事記』の伝は水神の次に和久産霊神を挙げられたるにて、この神も伊邪那美命の生み給へる神の如く聞こゆるを、この神は火神と土神との間の御子にして、伊邪那美命の直(じか)に生み給へる御子に非ざることは先哲も早く弁じ置かれたる通りにて、『日本書紀』一書(あるふみ)の伝、正しき伝なるが故に先哲も『日本書紀』によりて火神の御子として成文とせられたるなり。

 然れども成文には「和久産霊神、この神の子、豊宇気毘売神と謂す」と云ふ『古事記』の文をその儘『日本書紀』の伝の次に継がれたるにて、豊受神は和久産霊神の御子の如く論じられたれども、よく考ふるに豊受神と云ふ御名は保食神(うけもちのかみ)の魂の御名なることは先哲も云ひ置かれたる通りのみならず、和久産霊神と何れの神と御合(みあ)ひ給ひて豊受神を生み坐せりと云ふ伝さへも無く、特に『日本書紀』には前に挙げたる和久産霊神の明文の次に「この神、頭(かしら)の上より蚕と桑を生みたまひ、臍(ほぞ)の中に五穀を生みたまふ」と伝へられたる程のことにて、和久産霊神と豊受神とは全く御同神にして、「豊宇気毘売神」と云ふは須佐之男命に斬られ給ひし後の御名なること疑ひ無きことなれば、『古事記』の明文に「この神の子」とあるは「この神の魂」とあるべき筈なれば、古くより伝寓などの誤りならんと思はるゝが故に、余(よ)が一家の講究にては『日本書紀』の明文と道理に訴へてこの所の「子」の字は「魂」の誤りならんと考ふるなり。故に前に挙げたる本文にも「子」の字と「魂」の字を並べ挙げて識者の訂正を俟つ。

 尚この和久産霊神には保食神(うけもちのかみ)、大気津比売神(おおげつひめのかみ)、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)、その他多くの亦の名もあれども、紙数限りある略解の盡すべきものに非ざれば一言御名の解を加へ置くべし。
 まずこの御名の「保食」と云ふも「豊宇気」と云ふも「大気津比売」と云ふも「宇迦之御魂」と云ふも、共に食物の元種を起こし給ふより名付け奉ることにて、「食」を本語「ウケ」とも「ミケ」とも云ふより「宇気」「気津」「宇迦」など云ふことにて、「気」と「迦」とは通音より転じたるなり。その外の御名も皆「ケ」と云ふ本語の意なり。その委しきことは両先哲の伝によりて講究あるべし。

 こゝに挙げたる「和久産霊神」と云ふ「和久」は「若」、「産霊」は「皇産霊神」の「産霊」と同じ意にて、この神は造化御分担の上に於て禽獣虫魚五穀等の元を起こし給ふを以て、特に産霊の徳を分担成し給ふ神なるが故にかく御名に負ひ給ふなり。
 総て「産霊」と云ふ名は八百万神と坐す中にも両皇産霊神の外には火神の魂を火産霊神(ほむすびのかみ)、又、津速(つはや)産霊神と称し奉ると、この和久産霊神と津速産霊神の御孫に興台(こごと)産霊神とあるより外にはあまり無き例にて、この神等(かみたち)も皆火神の因(よすが)によりて称へ奉る事と聞こゆるを、産霊の神業には火徳を専らとするより、かく火神の因の神にのみ多く産霊の御名を負はせ奉りたるにもあるべし。
 この外に神祇官(じんぎかん)に斎(いつ)き祭る五柱の産霊神は、両皇産霊神の魂の御徳を分て云へる御名と聞こへたり。

 或る人問ふ、、前に御講述ありし火神と土神と御合ひ坐して和久産霊神生まれ坐せることは聞こへたるが、火神はこの次の伝に伊邪那岐命の為に斬られ給へるを、この時土神と御合ひ坐せるは斬られ給はざる前の事と云はんか、又斬られ給ひて魂となり給ひし後、その魂の御合ひ坐したりとすべきか。

 答ふ、御質問の議は未だ一家決定の説も無きことなれども御参考までに意見を述ぶべし。まずこの神の造化御分担の上に於て衣食の道を開き給はんが為に、必ず然らざるを得ざるを以て御合ひ坐したることは先哲も数々云ひ置かれたる如く、特に鎮火祭の祝詞の古伝によれば伊邪那美命、火神を生み給ひてこれが為に終に地下の幽府・黄泉(よみ)に入り給ふ時、上国(うわつくに)に火神を生み置き給へること御心にかゝり、その火神の荒(すさ)び給はん時には土神、川菜(かわな)を持ち、水神、瓢(ひさご)を以て鎮め坐せとて教へ置き給へる程のことにて、火神は男神一柱のみ生まれ坐して神の中にても最も建(たけ)き神なるが故に、土神・水神と二柱の姫神に詔(みことのり)して一柱の火神に二柱の女神を付け置き給へるは深き神量(かむはかり)にして、火神と土神と御合ひ坐せることは冥々の中(うち)に御祖神(みおやのかみ)より御教へ置き給ひたる事と窺ひ奉らるゝを、この二柱の女神の中に水神には御合ひ無くして土神のみに御合ひ坐したるも深き幽契なるべし。

 又その御合ひ坐せる前後を考ふるに、火神も生まれ給ふと直ちに斬られ給ふにも非ざるべく、『古事記』にては間も無きことの如くなれども、伊邪那岐命の伊邪那美命に御別れ坐して御嘆き坐しませるも只一時のことにもあるべからざれば、必ず長き御嘆きならんと窺ひ奉る旨もあれば、その御嘆きの長き間に火神と土神とは御合ひ坐したることにもあるべし。
 こゝに挙げたる『日本書紀』の伝も「軻遇突智神」と云ふ御名を以て御合ひ坐したる伝なれば、この御名は未だ斬られ給はざる前の御名にして、斬られ給ひて後の魂の御名は火産霊神と称し奉ることは先哲も云はれたる通りなり。

 『古事記』の明文によれば伊邪那岐命、直ちに火神を斬り給ひて黄泉に至り給ふ如く聞こゆれども、その間の隔たりたることは、この次黄泉に入り給ひし時の伊邪那美命の御答へに「悔しきかな、速(と)く来まさずて云々」とありて、その間の久しく隔たりたる事と聞こゆれば、この御合ひは未だ火神の斬られ給はざる前と見る方、然るべく思はるゝなり、尚よく考ふべし。

 或る人又問ふ、御説明にて火神の土神と御合ひ坐せるは未だ斬られ給はざる前の事と云ふは粗(ほぼ)了解せり。然るに又一つの疑点を生じたり。如何となれば、御母・伊邪那美命さへも火神を生み坐せる為には美蕃登(みほと)を焼かれ給ふ程の神体の神なるを、その御体にて御合ひ給ふと云ふは如何あらん。

 答ふ、御尤もの御質疑なり。これは余も未だ思ひ定め難く思ふ程のことにて講究の参考に付すまでの意見なれども、よく考ふるに今日にても土の火に耐ゆることは他の物質と異なる所にて、火を防がんが為には土を以て土蔵とし、或は平素火食するにも土を以て窯を造るを思へば、土は火に耐ゆること最も強きものなれば、その土を掌り給ふ造化分担の神なれば火神を鎮め火神の御心を取り給ふはこの神の御神徳と云ふも誣言(ふげん)には非ざるべく、今人間の土体も大別して云ふ時は生存中は火と土の混合物たるを思へば、他の神と違ひ火神の神体の未だ斬られ給はざる前に御合坐したりとするも妨げ無かるべし。 #0624【霊魂と肉体(2) -五元-】>>
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清風道人
カテゴリ:天地組織之原理
 

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